∞∞∞∞■『H20年度一級建築士合格者発表』∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞《H20.12.18記》

本日、一級建築士の合格者の発表がありました。
新たに4,144名の一級建築士が誕生しました。
まずは、合格した皆さんおめでとう!
合格した皆さんは、資格者として責任のある行動を期待します。
出来れば『E&A』の工事不正を撲滅する運動にご参加下さい。
 
残念ながら合格を逃がした皆さんは、明日に向かって早く気を取り直そう!
 
∞∞∞∞■『H20年度合格結果を見て』∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞《H20.12.21記》
                                      《H20.12.29追記編集》
今年も合格者発表と同日に2例の標準解答例が発表されました。
今年の解答例は、2案とも例年の解答例に比べると、標準以上の出来の良い解答例と感じました。
勝手に採点させて貰うと、解答例1:40点/50、解答例2:40点/50となりました。
これは合格レベルからすると高得点ではないでしょうか。
勿論、合格者の中にはこれ以上の回答をした受験者もいると思いますが、大方の合格者は多くの減点
を抱えた回答となったのではないでしょうか。
でも、合格できた!・・・今回の試験は、まずは書き上げる事が重要な事を示した試験といえます。
今年の課題の特徴は、全体構想は容易に出来あがっても、いざ室を配置しようとすると、敷地の狭さ
故に全ての室が簡単に収まらない点に有ったのではないでしょうか。
室の欠落は、そのまま容易さに直結してしまうため、例年になく室の欠落は厳しい判定と成ったよう
です。
狭い敷地に数多くの室を機能的に収めなければならない今年の課題は、高い熟練度を要した課題であ
ったと思います。それが証拠に、職域別や職務内容別合格者の割合に変化が出ています。
 
        設計事務所   建設業     プレハブ住宅   官公庁     その他
平成17年度  A 33.2%    @ 39.8%    B 6.6%    C 6.6%    D 13.8% 
平成18年度  A 27.7%    @ 39.1%    B 7.9%    C 7.4%    D 17.9%
平成19年度  A 30.0%    @ 37.0%    B 8.2%    C 7.3%    D 17.5%
平成20年度  @ 35.3%    A 33.0%    B 8.0%    C 6.8%    D 16.9%
 
 
        建築設計    現場管理    工事監理    行政      その他
平成17年度  @ 44.3%    A 25.3%    B 6.5%    C 4.1%    D 19.8% 
平成18年度  @ 43.0%    A 21.5%    B 7.0%    C 4.7%    D 23.8%
 
        建築設計    現場管理    工事監理    構造設計       その他
平成19年度  @ 41.8%    A 20.9%    B 7.2%    C 5.2%    D 24.9%
平成20年度  @ 47.0%    A 16.5%    C 5.8%    B 6.4%    D 24.3%
 
 
今回の試験で、初めて設計事務所勤務者がトップになりました。設計事務所勤務者以外の合格者も、
職務内容別に見ると、建築設計が大きく伸びています。
職務内容の分類方法はH19年度から変更されており、「構造設計」が新設されて、従来の「行政」
は「建築設計」、「工事監理」、「構造設計」、「その他」に分散し組み入れられています。
そうした中でも、構造設計を含んだ従来の建築設計は53.4%と大きく伸びています。
このことは、日常の業務で設計や計画に慣れ親しんだ、熟練度の高い建築設計従事者に有利になった
ものといえます。
難易度が増せば増すほど熟練者に有利な事は否めないことです。まだ結果は把握していませんが、初
受験者には厳しく、リターンマッチ組に有利な試験だったかもしれませんね。
ただ、これまでも何度も指摘しているように、設計を日常業務としているものには意外な落とし穴が
待っています。
設計者に特有のこだわり。設計プロとしてのプライド。これらが自然とハードルを上げすぎ、焦りと
共にタイムオーバーに至ってしまう。
こういう失敗を何度も見てきていると、「もっと割り切れよ!学校出てわずか2年の実務経験での試
験なんだぞ!何で肩肘を張ってるの!」と叫びたくなるのです。
 
今年の試験を評して、「合格レベルは低い。」「従来なら大きく減点されたであろう者まで合格して
いる。」「採点は甘すぎる!」等々論評している者も居ますが、課題が異なるのだから課題に難易度
の違いが生ずるのは致し方ないことだと思います。難易度が高ければ、合格基準は低くなるのは当然
かと思います。
今年の課題は、平面計画を拘束するEV等の垂直要素が多く、基準階の拘束もある課題でした。更に、
ペデストリアンデッキという一般の設計者も余り取り組んだ事が無い題材も含まれていました。最も
困難にした要素は、狭い敷地での高密度に有ったと思います。
昨年の自由度の多い課題から一変して、縛りの多い難課題だったと思います。だからこそ、まずは短
い時間の中でまとめ上げることが大事なことだったのです。
昨年と比較して合格基準は下げられたとは思いますが、決して昨年の合格者より今年の合格者が劣っ
ていると言うのでは有りません。合格した者はレベルに達した者と認められたのです。
たしかに、不合格者の中にも合格レベルかそれ以上の力を持った者がいることは事実です。しかし、
そう言う人の多くは、時間内に完成させなくてはいけない試験であるにもかかわらず、「こういう計
画でなくてはいけない。」とか「この動線はかくあるべき。」と固執しタイムオーバーとなった人達
です。この辺の所を改めて次回の試験には、是非栄冠を勝ち取って下さい。
 
来年からは、受験資格も試験内容も変わってきます。より実務者としての試験の色合いが濃くなって
来るでしょう。その辺の所に試験時間1時間の延長があるのかなと思います。
こんな事を書くと、設計の仕事をしてないと1級は受からないの?と失望されるかもしれませんが、
今からコツコツと準備を進めれば大丈夫。みんな建築の学科を出たんでしょう?
たまに普通科や文系出身の人でも、それこそコツコツと努力して合格しているのだから諦めないこと
です。
ただ言えることは、この試験は時間内にまとめ上げなければいけない試験である事です。設計を業務
としている人も、そうでない人も同じ事です。わずか2時間から2時間半でプランしなければならな
い試験だから、大まかでも全体像を素早くイメージするのがポイントの試験ではないだろうか。
そのためには、日頃から建物を注意深く観察すること。建物に興味を持つこと。建物を愛すること。
しかし、それだけでは合格しないのが現実だと思います。
だからこそ受験対策学校や通信で指導を受けるのでしょうけど、基本に建物を愛する気持ちが無けれ
ば、ただ資格取得のための受験や、付け刃的な対策では伸び方が違うのも事実です。
受験校での対策の他に、実際の建物や建築雑誌などに接して、それらを養分として身につけて下さい。
日々の努力がものを言います。
 
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『E&A』は、これからも建築士を目指す皆さんを応援します。
 
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