~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~《H21.8.24記》
                                     
■ エスキスの進め方−1


今年の課題の事務所ビルの資料は集まったかな?
まだの人は、急いで集めよう!また、近くの貸し事務所を見に行こう!
集めた資料の扱いで注意をしたいのは、あくまでも参考だから余り影響を受けすぎないこと。

或る印象的なプランが頭から離れずに、自分で計画を組み立てられない人を見ることがある。それは、
参考となるものの数が余りにも少ないため、影響を受けやすいのでは無いだろうか。
数多くの資料を集めると、いろんなパターンを目にする事になる。そうなると、個々のプランよりも
機能やゾーニングなどの本質的なものが見えてくる。
いくら良いプランでも、計画案を暗記したところで試験の役には立たない。課題で要求するものと一
致しなければ意味をなさない。課題の要求に沿って自分の案を組み立て力を付けてほしいものだ。

でも、自分で創造しろ、組み立てろと言われても、初めから出来る事ではない。
「学(まなぶ)は、真似(まね)るから始まる。」とも言われる。
エスキスの手順に従って進める中で、部分的な処理の仕方などは大いに参考にすればいい。
まずは、実際に課題沿って組み立てる練習を積むことだ。

◆<試験の仕組みを理解する。>

設計製図の試験はわずか5.5時間の勝負だ。通常の業務からすると考えられないほどの短時間の中
で作図まで完成させなければならない。
その為には、試験の仕組みを良く理解する事だ。「敵を知り、己を知れば百戦危うからず!」
そして、それに合わせた戦略が必要だ。

1.設計製図の手順

  a.課題文の読み取り。
  b.エスキス
  c.作図
  d.見直し       

2.時間の割り振り

  一般的な割り振りを示すと、以下のようになる。

 0   0.5  1.0  1.5  2.0  2.5  3.0  3.5  4.0  4.5   5.0   5.5  6.0 6.5  
  ┣━━╋━━┷━━┷━━┷━━╋━━┷━╋┷━━┷━━┷━━┷━━┷━━┷╋┫
   課題文の      エスキス     計画要点           作 図         見直し
  読み取り  (計画作業)    の記述
 (30分)    (2時間)     (45分)       (3時間)        (15分)

          
やはり、時間が1時間延長したと言っても全く時間が無い。
実務でこれだけの規模のものを、たったの2.5時間で計画を練り上げるなんて有り得ますか?
手書き作図なんて日頃しない現代において、A2版を3時間で仕上げられますか?
とんでもない時間割の試験が一級建築士の設計製図の試験なのは、改正されたと言っても同じ事だ。
・・・しかし、毎年、合格者はこれを見事に成しとげている。

課題文を良く理解しようと丁寧に読み過ぎ、予定時間オーバーで後の作業に影響した人。
良い計画案を回答しようと時間をかけ過ぎ、作図が完了しなかった人。
作図時間に気を取られ、いい加減なエスキスで作図に取りかかり、作図中に色々と手直しをする羽目
になった人。すべて不合格です。

設計製図試験を受けるには、それなりの準備と訓練が必要となってくる事を理解してほしい。


◆設計製図の手順
 
a.課題の読み取り。

A3版にびっしかかれた文章を、一通り目を通すだけでも10分は軽く掛ってしまう。
しかし、目を通しただけでは頭には何も残らない。まして、試験という緊張の場では、頭の中は真っ
白で、目は文字を追ってもちっとも頭に入らない。だから、読み方には工夫が必要になってくる。

イ.まず、課題文の構成を知り、課題文に慣れること。すなわち、課題を数多くこなすこと。

  課題文の構成・・・(赤注は筆者の注釈)
   実際の課題文は各年度のチャレンジ奮闘記を参照。
  ┌───────────────────┬───────────────────┐
  │タイトル               │4.所用室              │
  │T.設計上件             │┌─┬──┬──┬─────────┐│
  │  建物の役割や建設の目的が述べられて││ │室名│面積│  特記事項   ││
  │  いる。・・・(注1)       │├─┼──┼──┼─────────┤│
  │  特に要求している事項       ││部│  │  │         ││ 
  │  @・・・・            ││門│  │  │         ││
  │  A・・・・            │├─┼──┼──┼─────────┤│
  │ 1.敷地及び周辺状況・・・(注2) ││部│  │  │         ││
  │  ・東西南北の道路と周辺状況状況  ││門│  │適宜│(注5)     ││
  │  ・敷地の高低差の状況       ││ │  │  │         ││
  │  ・用途地域、防火指定       │├─┼──┼──┼─────────┤│
  │  ・地盤、インフラ状況       ││部│  │  │         ││
  │                   ││門│  │  │         ││
  │  ││               │├─┼──┼──┼─────────┤│
  │ ─┘└───────────    ││共│  │  │         ││
  │ ─┐┌─────────┬─    ││用│  │  │         ││
  │  ││         │     ││そ│  │  │         ││
  │  ││ 敷地&周辺の略図│     ││の│  │  │         ││
  │  ││         │     ││他│  │  │         ││
  │  ││         │     │└─┴──┴──┴─────────┘│
  │  │├─────────┘     │ 上記表の合計面積・・・(注6)   │
  │                   │                   │
  │ 2.建築物             │U.要求図面等            │
  │                   │ 1.要求図面・・・(注7)     │
  │  ・構造・階数・延べ床面積・(注3)│┌─────┬───────────┐│
  │  ・階段・EVなどの垂直な条件   ││図面・縮尺│  特記事項     ││
  │  ・設備に関する条件        │├─────┼───────────┤│        
  │                   ││1階平面図│           ││
  │                   ││ 兼配置図│           ││
  │                   ││     │           ││
  │ 3.その他の施設・・・(注4)   ││     │           ││
  │  ・建物以外の屋外要素の条件    ││     │           ││
  │   屋外広場など          ││     │           ││
  │   駐車場条件           ││2階平面図│           ││
  │   自転車置場の条件        ││     │           ││
  │   屋上禄地等           │├─────┼───────────┤│
  │                   ││断面図  │           ││
  │                   │└─────┴───────────┘│
  │                   │ 2.面積表  ・・・(注8)    │
  │                   │ 3.設計の要点・・・(注9)    │
  └───────────────────┴───────────────────┘
   

ロ.文章の中で重要な部分にアンダーラインなど印を入れて頭に叩き込む。
  ・・・このとき注意をしたいことは、アンダーラインの引き方だ。
     慣れない内は、文章全てが重要に思えてしまうためラインだらけになる。
     蛍光ペンでラインを引けば、全体が真赤っかとなり、どの部分が重要か分からなくなる。
     ラインやマークの工夫をしよう。これは、自分の遣りやすい方法を自分で探すしかない。


  参考まででに、私のやり方の要点を述べさせて貰うなら、

  @  2段階マーク。

      ・まず、エスキスに必要な事項。
      ・次に、エスキス終了後に、作図に必要な事項。

     ただし、文章は、T.設計条件から、U.要求図面等、V.計画の要点まで通して読む事。
     UにもVにもエスキスに必要な事項が記述されてる場合が多く、最初からマークする。

  A 要点がすぐに探せるマーク方法。
     一度には頭に入らないから、何度も読み返すことを前提に見易く探し易いアンダーライン、
     マークの仕方。

      ・文章に長々と引くのでなく、ピンポイント的に言葉や数値にマーク。

      ・内容によってマークの仕方を変える。
         a.アプローチや位置関係の記述   →文章の冒頭にレッドマーク ●
         b.重要な要素           →アンダーライン  ───────
         c.面積や台数などの数値      →囲い、又はマーカー
         d.その他の施設は文字の羅列で見辛い→駐車場、広場などの名称を囲い又は
                           マーカー。 
        e.内容によって色分けをする。   →天井高さ、吹抜など垂直構成に関する事
                           はブルーマーカーとか色を変える。


ハ.課題文は何度でも確認すること。
  ・・・エスキスで行き詰まった時などに、もう一度見直すと条件の読み違いを発見する事が多い。
     これだけの長い文章を一度に頭に入れようと思っても入るわけがない。

ニ.読みながら、重点事項は視覚に訴えるように書き出す(メモる)。
  


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆課題文の構成の注意点

 注1.冒頭の数行はこの施設の役割や建設の目的が述べられている。
    @、Aにはより具体的に要望が述べられている。
    割と漠然とした表現のため掴みどころがないが、いわゆる建築主の基本要望だ。これを無視
    した計画案を提示しても跳ねられるだけだ。

 注2.敷地及び周辺条件を文章で表示している。下の敷地及び周辺環境図と照らし合わせて読むこ
    とが重要。
    やはり、図示されたものは分かりやすく、頭に入る。

 注3.要求建物の概要の記述。この条件を違反したら失格は言うまでもないこと。
    面積は○○〜○○uと巾が有るため、中間値を目標とすると良い。
    今年は初めてのケースだが、容積制限一杯(許容範囲-5%)を目標なんて有るかもしれない。

 注4.その他と言うと軽く考えがちだが、建物の形状など計画の方針を決定する非常に重要なもの
    で有ることを認識する。→ 建物を計画する前に、その他の施設の配置を決める事が重要。

 注5.所用室の面積で適宜とある場合がある。計画者に大きさを任せるわけだが、常識の範囲を外
    れると減点となるので要注意。
    エントランスホールなど重要な部分に対しても適宜が多い。これは、エントランスホールは、
    それぞれの計画によって異なるので適宜としているが、役割上決して小さい面積ではないこ
    とは認識してほしい。
    もちろん課題によって違ってくるが、100〜200u 場合によってはそれ以上にもなる
    大きさである。

 注6.表枠外の床面積は、表に明示された面積の合計を表している。この数字は何を意味している
    かというと、レンタブル比算出に必要だ。階の振り分けや全体のボリュームを掴むための重
    要な数値。(今年は貸事務所なので、この数値は提示されずレンタブル比を提示する可能性
    も有る。)

 注7.要求図面等はエスキスが終わって、作図をするときに読めばいいと思っている貴方!
    それは大きな間違いだよ!
    作図のボリュームを事前に予測してないと時間配分が違ってくるだろう。
    先に、標準的な時間割を書いたが、あくまでも標準だ。課題によって作図のボリュームは違
    ってくる。多そうと思えば、エスキスの時間をいつもより早めに切り上げる必要がある。
    それに、要求図面等の部分にもエスキスに影響をしそうな事項が書かれてる場合も多いので、
    課題文は最後まで読みとる事。

 注8.求積の仕方が千差万別。中には採点者の気分を悪くするような書き方をするものがいる。
    採点者に解って貰うことが重要。
    細分化しすぎると、数式がどの部分を示しているか解らなくなってしまう。そういう者に限
    って、肝心の寸法が抜けている。求積の式を見ただけでも落としたくなる。
    そうならないためには、数式を少なくすること。できるだけ大きな固まりで求積する事。
    まともな計画をすれば建物の凹凸も少なく、自然と数式も少なくなるけどね。
    それと、計算式の順番を「ヨコ×タテ=A」と一定にしておくこと。

     ┌──┐ ┌──────┐
    │  └─┘      │       左の図は建物の形としては良くないが、ピロテ
    │           └──┐    ィーなどが有る場合は、凹凸が多い求積になる。
    │   計画建物       │ 
    └───┐          │
         │        ┌─┘
        └────────┘

            
    ┌──┐ ┌──────┐                      ┏━━┯━┯━━━━━━┯━━┓
    │  ├─┤      │           ┃    └─┘            │    ┃
    │  │ │      ├──┐                ┃                      └──┨
    │  │ │      │  │    ⇒   ┃              ┃ 
    └──┴┬┤      │  │        ┠───┐          ┃ 
        ││      ├┬─┘        ┃   │        ┌─┨ 
        └┴──────┴┘          ┗━━━┷━━━━━━━━┷━┛
    <差分化された求積図> ×           <大きな固まりから引く求積図> ○


 注9.計画の要点は、今年から10項目と大幅に項目が増える。
    計画に対する意志表示の重要性を増したことと、言葉と図面の一致を重要視したことだ。
    計画するに当たって、設計者としての考えを持つことが必要になってくる。これは、かなり
    実務的な傾向といえよう。
    只、一般的に計画は得意でも文章にするのは苦手と言う人が多い。まして、唯でさえ短い試
    験時間に、課題文を見てから苦手な文章を考え始めるなんて事では合格は望めない。事前に
    準備しておくのが賢明な方法だろう。




◆読みながら文を視覚に表す。

課題文は、敷地状況図以外は全て文章になっている。文章をそのままイメージすることは難しい。
一度視覚に訴える表現に変えると有効だ。

例えば、「管理事務室と通用口及び機械室を近接させる。」などの位置関係の記述は即機能図やイメ
     ージにつながる。

      ┌───────┐
      │ 空調機械室 │
  通用口 ├───────┤ 
     →┌─────┐ ─
      │管理事務室│ │
      └─────┘ │

例2 「喫茶室は外部からも直接出入り出来るものとする。」

                    外部

                ▽        ▽
               ENT     ┌───┐
               ホール   ←→│喫茶室│
                       └───┘

例3 「展示室は外部からも直接出入りできるものとする。」

          ↓ 外部 ▽
       ┌────┬────┐       
       │    │ ENT│
       │展示室 │ ホール│
       │    │←   │
       └────┘


※ 個々に表した上記の位置関係図を周辺状況から決まるアプローチなどを考慮してまとめ整理すると、
  機能図に近づいてくる。
  (例は表現の制約上四角に囲っているが、実際はフリーハンドの円で室名を囲ったものになる。)


            外部

        ▽    ▽    ▽  
    ┌───────┬─────┬───┐
    │ 展示室   │    →│喫茶室│
    │       │ ENT │   │
    ├─────┬─┤ ホール ├───┤
    │空調機械室│ │     
 通用口├─────┘ │ 
   →┌─────┐ ─
 SP │管理事務室│ │
    └─────┘ │



※ どうです。読み取りながらエスキスの事を意識して読むとただ読むのと大きく違ってくるだろう。



◆「E&A」は、一級建築士を目指す皆さんを応援します。少しずつ更新しますからお楽しみに。
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