~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~《H21.8.10記》
                                        
■ 平成21年度設計製図試験対策−6


◆設計製図試験課題発表 学科試験が去る7月26日に実施されましたが、学科試験の2日前の7月24日に設計製図試験の課題 が発表されました。学科試験を受験された人は、まずは学科試験が第一と設計製図の方まで気が廻らな かったと思います。学科試験の結果発表は9月8日とまだ先ですが、結果が出てから製図試験を取り組 もうなんて考えている人はもう終わってますね。 学科試験で一息ついている暇なんか有りませんよ。次のステップをクリアしなければ一級建築士になれ ないのだから、目を設計製図に向けましょう。 今年の課題を見て、例年との違いには少々驚きました。と言うのは、例年ですとタイトルのみの発表で、 中身は皆目解らないものでした。例えば、昨年ですと「ビジネスホテルとフィットネスクラブからなる 複合施設」と言うたった1行の課題のみの発表だったのです。 今年は新制度第1回目だから例年とは少し形が変わるかな?と思ってはいましたが、予想以上に丁寧に あれこれと詳細を発表してくれています。課題文は以下の通りです。 ┌─────────────────────────────────────────┐ │        平成21年一級建築士試験「設計製図の試験」の課題         │     │                                         │ │                                         │ │ 貸 事 務 所 ビ ル                             │ │(1階に展示用の貸スペース、基準階に一般事務用の貸スペースを計画する。)     │ │                                         │ │ 要求図書                                    │ │  ●1階平面図兼配置図(縮尺1/200)                      │  │  ●基準階平面図(縮尺1/200)                         │ │  ●断面図(縮尺1/200)                            │ │  ●基準階梁伏図(縮尺1/200)                         │ │  ●面積表                                   │ │  ●計画の要点等                                │  │                                         │ │  (注)要求図面に新たに図示させるもの                      │ │  ・耐力壁等の位置、柱・梁等の断面寸法                     │ │  ・設備機器等の位置、設備シャフト等の位置                   │ │                                         │ └─────────────────────────────────────────┘  (解説) 1.まずタイトル。中央建築審査会の発表のように建物用途が複合用途を改めて、「貸事務所ビル」と   単一の用途となっています。 2.( )書きで展示用の貸スペースを計画。・・・建物そのものは単一機能だが、事務室以外の機能   を指示し複合要素を盛り込んだと思われる。事務所は限られた人々の利用に対して、展示用スペー   スは不特定多数が利用する施設と考えるべきでしょう。実際によく見られるパターンだけにイメー   ジはし易いですね。 3.要求図面を発表してくれています。こんなこと従来は無かったことですね。   新制度では、従来の計画図の他に伏図や矩計図を加え、その中から4面ほどを出題すると発表して   いました。その4面を具体的に発表してくれたことは有り難いですね。 4.更に注釈で図示させるものとして細かく構造、設備の要素を要求しています。学習の方向性が見え   てきますね。              ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ (対策) 1.建物の用途が「貸事務所ビル」とはっきりしました。まずは、一般的な貸事務所の現状を知ること   です。書籍、パンフレット、実物見学でイメージの素を沢山仕入れ、整理しましょう。 基準階形式の事務所ビル(一般的には事務所ビルは基準階形式)は、コアのパターンが重要です。   特殊なもののでなく、極一般的な中堅ビルを参考にすると良いでしょう。 2.事務所ビルでも、自社ビルと貸ビルとはコンセプトが大きく違います。貸ビルは賃料で収益を上げ   なければなりません。建物の全体の中で、貸し面積の割合が求められます。いわゆるレンタブル比   が問題になってきます。現実の貸ビルを参考に、コンパクトにまとめることが必要でしょう。 3.今回は1階に展示用貸スペースを併設します。   問題は、展示スペースのレベルと言うか対象をどのように設定するかですね。貸展示場だから、色   んな使用目的に対応出来るのが理想でしょうが、それに捕らわれすぎると収益を圧迫してしまう。   課題での規模や廻りの状況等で判断しなくてはいけないでしょうが、天井高さは課題文に明示され   るのではないでしょうか。皆さんは、天井が高いもの、無柱のもの等どのような課題でも対応でき   るよう準備は必要ですね。 4.要求図面の中に梁伏図が有ります。   今年は構造図も書くのだなと一人でガッテンしてたら、やっかいなことが発生してしまいました。   と言うのは、梁伏図の解釈が人によって少しずつ違うって事が分かったからです。   梁伏図=床伏図? or 梁伏図≠床伏図?、見下げ or 見上げ? この基本的な見解すら意外と   人によって見解がマチマチなのです。   建築図って機械図と違って、統一性が無く結構バラバラで、注釈や凡例を併記することで済まして   いる所があります。これは建築が如何に多様で、統一した表現が難しいかと言うことでしょうね。   実在の構造図作成ソフトを見ても、見上げ、見下げの両方に対応出来るようにしていますね。   何故バラバラな表記が生まれたか少し検証してみましょう。   ・日本の建築は古代からの木造文化があり、そこに西洋文化注入を契機に煉瓦造、鉄筋コンクリー    ト造が混在するようになった。それらは、建築という一つの括りではあるが、設計者、施工者と    も棲み分けの建築文化が出来上がった。   ・設計者も、西洋技術を修得した技術者の流れと、日本独特の請負から始まった設計施工一貫請負    から発達した施工業者の設計技術者の2つの流れが存在する。   ・上記の2つの事項から、それぞれを統一することもなく、それぞれの慣習での図法で今日に至っ    ている。   ・従って、大まかに次の異なる表示・作図法が存在する。    梁伏図   → 木造、鉄骨造に多い呼び名。    床伏図   → 鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造に多い呼び名。    見下げ伏図 → 設計事務所系。    見上げ伏図 → 施工業者系。(ちなみに、施工図は見上げ図)   ※受験者にとっては、こんな状態ではどのように表記すればいいか混乱してしまいますね。    ただ、今年の梁伏図は基準階の梁伏図なので、梁の階表示は必要ないからだろうから、図柄とし    ては見上げ出も見下げでも結果は同じとなる。    ただ、日本構造技術者協会(JSCA)では一般には床面から1m〜1.5mからの見下図とし、    梁はスラブに隠れるために点線表示としています。1/200の縮尺図面で点線表記は時間的に    見ても大変不利です。試験は見上梁伏図で、梁を実線表記した方が得策でしょう。但し、見上図    との但し書きは絶対必要ですね。  5.計画の要点等をA3判の別用紙に書かせます。要点の記述は、既に3年前から始まっていますが、   H18年(2項目)、H19年(3項目)、H20年(4項目)と年々増え続けていました。そして今年   は一挙に10項目となり別紙記入となります。1時間の時間延長がなされると言っても、10問の   記述はかなりの負担となります。有る程度の事前の準備は欠かせないですね。   例えば、構造に関しては、RC造、SRC造、S造それぞれの構造の特性を把握し、それを事前に   文章としてまとめておく。採用した構造形式がSRC造で有れば、準備したSRC造の文章を記述   する。設備にしても同じ、事務所でよく使われる設備方式、展示場でよく使われる設備方式を事前   に研究して文章にまとめておく事が重要でしょう。   また、これまでの記述は、単なる知識を述べるのでなく、記述内容が計画にどのように反映された   かを問う試験でした。丸覚えの文章を書きっ放すのでなく、計画に反映させて意味のある記述にな   ります。記述試験は計画と独立したものでなく、一体のものであることを認識すべきです。   計画の要点は自由に書かせるのでなく、或るテーマに沿って書かせる形式でしょう。或るテーマと   は、それこそ試験元の要求事項なのです。そのテーマに沿うように計画しなさいと言うことですね。   例を挙げましょう。地下無しの建物が要求されたとします。基礎は地下がないので一般的には独立   基礎ですね。計画の要点に「建物の省エネに対してどのように配慮しましたか」と問われたとしま   す。前もって準備した文章が頭に浮かび、「基礎部分を蓄熱ピットにした蓄熱システムを取り入れ   ることで、深夜電力を有効活用し省エネを計った。」と記述したとします。これが計画の後で思い   ついたように書いたとすれば、計画図は独立基礎のまま、記述はピット形式のベタ基礎となり食い   違いが出てしまいますね。   だから、記述は先に書く書かないは別にして、課題文を読みとるときに必ず頭に入れておき、エス   キスに織り込むことが重要です。記述は最後に書くのでなく、エスキスのチェックの意味を込めて   エスキスが終了した時点で書くのだ良いと思われます。それから作図に掛かると漏れも、食い違い   も少なくなるでしょう。 6.図面に図示する事が具体的に述べられいます。   ・耐力壁の位置、柱・梁等の断面寸法は、耐力壁の入れ方を理解し、柱・梁等の断面寸法は事前に    学習しておくことです。等と有ります。小梁、床版の厚み、耐力壁の厚み程度は常識の範囲で準    備すると良いでしょう。   ・設備機器の位置設備シャフト等の位置は、それぞれの設備方式によって押さえるべき事を整理し    ておくことです。例えば電気室とEPSの関係、EPSの役目から形状を理解する。天吊り空冷    ヒートポンプパッケージとPSと室外機の関係、PSの大きさ位置。WCの給水・排水・通気管。   ・学科で学習したことを、具体的に図面と連動してイメージ出来るようにしておく事が重要でしょ    う。基準階のコアは設備を含めたパターンをいくつか準備する必要が有りますね。      ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~  「E&A」では、試験への取組み方や計画の進め方等を中心にお送りしています。充分な資料は提   供ま出来ませんが、注意点や考え方を中心にお送りします。   皆様も独自に見学したり、インターネット等で関係資料を集めて下さい。   今年の試験は、単一用途と言うこともあり、難解な課題は予想されないし、計画ではそんなに差が   出るとは思えません。試験元の要求に的確に対応し、それを確実に図面化する事が重要でしょう。   図面上の書き漏らしや、作図・記入不足は痛いでしょうね。作図時間をしっかり確保して下さい。
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