■    本山龍池山大雲院本堂耐震改修


      耐震診断/補強計画編                   by   篤永建築企画設計事務所

      (写真の複製・転載・修正・加工は、かたくお断り致します。)

 
寺院専門誌「寺門興隆」で
紹介されました。
龍池山大雲院は現在京都の東山に位置し、創建400年を超える歴史有る浄土宗の名刹です。
元は天正15年に烏丸二条に貞安上人により創建されましたが、天正18年に秀吉の命により寺町四条に移され、途中天明の大火で全焼に合うも再建されて永く寺町に有りました。昭和48年に現在の地に移され、今回耐震改修される本堂はこの時建立された鉄筋コンクリート造2階建ての建物です。築30数年の経過ではありますが、旧基準で建設されているため、近々に予想される大地震に対して心配される所です。
そこで、当寺院の信徒会館(龍池会館)の設計でご縁がありました私に相談があり、まずは建物診断をする事になりました。以下は診断から耐震改修計画、耐震工事に至るまでの記録です。

▲ 正  面  外  観

      建 物 調 査 ・ 耐 震 診 断
 目視調査
    ・機械探査
建物の劣化状態を、目視にて調査。構造体の寸法や鉄筋数を機械調査し、図面と照合。
▲ 部材及び劣化調査 ▲ 屋根裏調査 ▲ 柱鉄筋非破壊調査 ▲ 梁鉄筋非破壊調査

 サンプル採取 現在のコンクリート強度を調査するために、コアサンプルを採取。
コアは試験場で強度試験や中性化試験がなされる。
 
▲ コア抜きのための鉄筋探査 ▲ 鉄筋を避けてコア抜き ▲ コアサンプル

 はつり調査 柱の一部をはつり、コンクリートの中性化の進行度、及び鉄筋の錆の状態を調査。
▲ 柱はつり調査のための鉄筋探査。 ▲ 鉄筋の状態調査。 ▲ コンクリートの中性化試験。 ▲ はつり跡を樹脂モルタルで復旧し、塗装。

 耐震診断 現況調査書に基づきコンピューターにて耐震解析を行い、耐震診断書としてまとめる。
▲ 1階平面と劣化状況 ▲ 2階平面図と劣化状況 ▲ 立面図と劣化状況 ▲ コンクリートひび割れ状況図

 
 ◆ 診断の結果、地震の衝撃に対して倒壊、または崩壊の恐れが有り、補強が必要との結論に至る。
 

     耐 震 補 強 計 画  ▲印の付いた画像は左クリックで大きい画面になります。
 耐震補強の目標 耐震診断の結果より、一般的なI=1.0と 25%増しのI=1.25の2通りの耐震補強目標を立てる。
▲ 1階は両方の目標に対してY方向1箇所設置。 ▲ 2階はI=1.25の場合、X、Y方向とも2箇所づつ設置。 ▲ 2階はI=1.0の場合、X、Y方向とも1箇所づつ設置。 ▲ 力学的バランスを考え、正面の柱に耐震壁を設置。

 耐震の工法検討 壁の増設は現在のデザインに大きく影響するため、構造計算の前にファサードデザインと工法を検討。
   
▲ 鉄筋を組みのコンクリート壁 ▲ 鉄板製の補強パネル ▲ 鉄骨補強ブレース  

 デザイン検討 開放性を重視し鉄骨格子で検討。
寺院に相応しいデザインを模索。
   
▲ 開放性の有る鉄骨縦横格子で検討  シミュレーション画像
開放性はあるものの牢獄の檻の感じ。
▲ 寺院で良く見られる斜め格子で検討  シミュレーション画像
部材の大きさによっては、格子の印象が強すぎる。

 仮計算後再検討 仮計算の結果部材が大きくなり、期待する開放性が望めない。
格子以外の耐震壁を再検討。
▲ 一般的な鉄骨フレームで補強し、ボード張り。  花頭窓案
仏教寺院らしい窓、窓だけが古風な印象
 連子窓案
既存に使用されている窓
 丸窓案
大屋根の曲線と馴染んだ印象

 デザイン再評価 シンメトリーの壁は寺院としては相応しいデザインだが、現在の開放的なイメージが損なわれ、現在の印象と異にする。現在の印象を大きく変えない方針で、I=1.0の壁1枚の検討を始める。更に、現在と同じ質感で鉄筋コンクリートの壁で検討。
 現在の姿。  連子窓案;試算の結果、開口制限のため開口部は1.2m角と小さくなる。  丸窓案;直径1.35mの開口  障子窓案;開口の大きさに関係なく、見かけの障子を設ける。

 決定案 障子窓とし、現在の印象を大きく変えない。
実際の開口は丸窓とし、柔らかさを出す。
建設前に画像シミュレーションで完成時を予想。
▲ 現在の障子窓に合わせたファサード。 ▲ 手前の壁が新設耐震壁。奥の既存の窓に合わせたデザイン。 ▲ 障子を開けると、丸窓が現れる。 ▲ 内部の改段室側から耐震壁を望む。
縦長の窓の壁も新設耐震壁。

Topへ戻る                                       工事現場(1)へ