◇マンション管理のレクチャー
マンション管理
1)法定点検と任意点検
2)建物の劣化
3)コンクリートのひび割れ
4)長期修繕計画と日々の観察
5)建物診断(劣化診断)
6)大規模修繕の判断
7)大規模修繕業者選び
8)施工と工事監理の分離
9)付加価値工事
10)積立金が不足したら
11)大規模修繕費用を安くする方法
これら11の項目を1つ1つ記述するだけで膨大な量となりますので、ここでは要点だけ簡単
に述べます。
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1)【法定点検と任意点検】
マンションのメンテナンスに関しては、大抵の居住者は建物に関しては詳しくありませんし、
共有資産のために、個人の考えだけで建物をメンテナンスする事が出来ないために放置されが
ちです。そこで、法律では建物を定期的に点検して保全に努めるよう義務づけています。
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│ 項 目 │ 周 期 │ 法 律 │ 点検資格者 │
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│特殊建築物調査報告 │3年に1回 │建築基準法 │1・2級建築士・特殊建築物調査資格者│
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│建築設備定期検査 │ 年1回 │建築基準法 │1・2級建築士・建築設備検査資格者 │
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│(簡易)専用水道 │ 年1回 │水道法 │水道技術管理者 │
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│消防設備点検 │ 年1回 │消防法 │消防設備士・消防設備点検資格者 │
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│エレベーター定期点検│ 年1回 │建築基準法 │1・2級建築士・昇降機検査資格者 │
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法定点検は法律で義務付けられている以上、管理組合がメンテナンスに無関心でも曲がりな
りにも行われているのが現状です。しかし、管理組合は点検業務の内容に疎いため、管理会社
に委託し、管理会社がさらに専門業者に再委託していることが多いのです。
こういうケースでは、法的に義務づけられていることと、管理組合が無関心であるということ
から、管理会社では点検費用を割高に設定している場合が結構あります。
もし、理事やマンション住民の中に法定点検有資格者がいれば、その人に点検をしてもらうこ
ともできます。また、管理会社任せにせず、管理組合が個別に専門業者を選び直接契約するこ
とで、点検費用を安くすることも可能です。まずは管理組合でマンションの点検について関心
を持ち、知識や経験を蓄積していくことが大切です。
任意点検は、日常の管理業務の一環として行われることが多く、敷地内の施設や建物の外壁、
手すり、屋上、共用部分、電気設備、給排水設備などに異常が無いかどうか、主に目視により
点検します。
2)【マンションの劣化】
マンションは鉄筋コンクリート造なので、頑丈で長持ちすると多くの方が思っています。し
かし、人の身体と一緒でマンションも時間の経過とともに様々な劣化現象が起こります。
<鉄部>
まず劣化を認識するのは、鉄部などの錆です。鉄は錆びると赤茶けた錆が表れ、時には錆汁
として流れ出すために目に付きます。しかし、錆が目立つほどに放置していると手遅れのケー
スが多いものです。浮いた錆を落とすと、鉄部本体が無くなってしまうケースも有ります。
鉄は数年で錆びるものとの認識で、早め早めの処置が重要なのです。2〜3年ごとの塗り直し
が必要なのが鉄なので、近年のマンションではメンテナンスフリーを考えて錆びにくいステン
レスやアルミ材の仕様に変わってきています。現状が鉄を多く使用しているマンションの場合、
大規模修繕を期に仕様をかえては如何でしょう。
<外装材>
続いて外壁の劣化が目に付きます。外壁に多く用いられている吹付材は、まず艶が無くなり、
次に変色したり褪色します。一般の方は、古くなったから色あせも仕方ないかなと古女房と同
じように考えていませんか?
鉄筋コンクリート造にとって外装の劣化は、外見の見てくれだけの問題ではないのです。
木造の場合の大敵は湿気ですが、湿気により腐朽菌がはびこり木を腐らせてしまうだけでなく、
腐朽菌を求めて白アリが集まり、白アリの被害も受けてしまいます。
鉄筋コンクリートの大敵は、コンクリートの中性化による鉄筋の錆です。本来のコンクリート
はアルカリ性で、大気中の炭酸ガスに触れることで少しずつ中性化します。
では、なぜ中性化が問題かというと、コンクリートのアルカリ成分で構造体の鉄筋が錆るのを
防いでいますが、中性化すると鉄筋を守れなくなり錆びてしまいます。鉄筋は錆びると体積が
膨張し、周りのコンクリートを押し出してしまいコンクリートの崩落にまでなります。中性化
は構造耐力の劣化に直結する問題なのです。
装吹付材はコンクリートが炭酸ガスに触れないようにするバリアーで、決して色付けだけの化
粧材ではないのです。外装修繕の時期は環境によって大きく異なりますが、10年を目安に準
備が必要です。処置が遅れれば遅れるだけダメージは大きくなり、費用も初期の費用と比べも
のにならないくらい多額の費用となってしまいます。
▲中性化試験サンプル採取 ▲試験サンプル ▲赤紫はアルカリ成分保有部分
<クラック>
コンクリートにヒビが入るのは、コンクリートが引っ張る力に弱い性質上、また地震の多い
日本に於いては有る面仕方が無いことです。
しかし、だからといって放置するわけにはいけません。表面の細かなヒビでは漏水はしません
が、放置すると外装材の劣化以上に中性化し易くなります。また、ヒビが大きくクラック上に
なると、雨水が直接鉄筋に触れやすくなるために鉄筋の錆に直結しますし、室内への漏水とい
う問題にもなります。
大規模修繕ではこれらのヒビ、クラックの処置を最優先にし、存在を見逃さずに状況に応じた
処置が重要になってきます。
▲外壁のクラックを放置すると ▲鉄筋が錆びコンクリートが崩落
<防水>
防水は屋上の屋根、バルコニーの床、開放廊下の床、屋外階段の床、庇など、マンションの
あらゆる所に使用されています。
防水には2つの目的が有ります。1つは、建物である以上最低限でも雨露をしのがなければな
りません。もう1つは、鉄筋コンクリートの中の鉄筋が錆びるのを防ぐ目的です。いずれにし
ても防水材がその機能を失ったら、大変なことになってしまいます。
防水は、ひとたび漏水すると漏水個所を見つけるのは容易では有りません。漏水個所の真上が
欠陥個所とは限りません。それだけに防水の劣化には、特に注意が必要です。
一口に防水と言っても、その重要度は場所によって違ってきます。直接雨を受ける屋上防水は、
太陽光にも曝されて最も劣化しやすい環境にあります。
屋上防水の目安は仕様によっても違いますが、アスファルト露出防水で15年が目安でしょう。
大規模修繕の10年サイクルより長めですので、防水工事を大規模修繕工事に含めるかどうか
悩ましいところです。
足場を掛けなければ工事が出来ない場所(住戸専用部のバルコニーなど)の防水は、もう少し
持つようでも早めに処置するのが賢明です。
<シール>
シールは、建築資材で異質の材料では馴染まず、隙間が出来るところに使用します。シールを
する事で雨水の浸入を防ぎますが、耐用年数は10年〜15年程度です。サンプル劣化試験を
行って十分耐力が残ってたとしても大規模修繕工事の時に打ち換えが必要です。その理由とし
ては、次回大規模修繕迄は持たないのと、外装吹き付けと一体となって施工されるからです。
<設備>
近年、住環境において設備が占める割合は増え続けています。従来は給排水・電気程度でし
たが、その他に通信、セキュリティー、防災設備等が増えてきました。これらの設備機器の耐
用年数は長いですが、生活に直結しているものが多く、一度不具合が生じた場合には即日常生
活に影響を受けます。電気系は復旧は比較的早いですが、水系は復旧は簡単ではありません。
従って、排水管の清掃、給水ポンプのボーバーホールなど法定点検だけでなく自主的な保守点
検が必要になって来ます。
一般的な機器の取り替え時期は、給水ポンプ:15〜20年(オーバーホール:5〜8年)、給水管
は、亜鉛メッキ鋼管:15〜20年、硬質塩ビライニング鋼管:30年程度、排水管は、硬質塩ビラ
イニング鋼管:25〜30年、汚水鋳鉄管:30〜40が目安でしょう。
材質等により大きく耐用年数が違いますから、何が使われているか知っておく必要があります。
この耐用年数も定期的な清掃の具合によって大きく違う事は言うまでもありません。
3)【コンクリートのひび割れ】
<クラック>でも少し触れましたが、コンクリートのヒビについて詳しく述べましょう。
コンクリートは引っ張る力には弱く、ひび割れは仕方がないことだと言いました。でも、ヒビ
割れにも構造体に影響があるものと、無視して良いものが有ります。
新築後、コンクリートは5〜6年の年月をかけて乾燥することで縮み、その際に小さなヘアクラ
ックと呼ばれるひび割れが発生することがよくあります。
ただし幅が0.3mm未満のひびなら、構造上の問題はほとんどありません。
重要なのはひび割れの程度を知り、それに見合った適切な処置を早めに施すことです。
ひび割れの幅が0.3mm以上の場合は要注意です。
雨水や炭酸ガスなどがそこから浸入すると、コンクリートのアルカリ性が次第に失われ中性化
していきます。
そうなるとコンクリートの中の鉄筋に錆が発生し、強度の低下や漏れ、外壁のタイルの剥離な
どを招きます。
ひび割れから白や茶褐色に濁った水が漏れ出ている場合、コンクリートの中の鉄筋が錆びてい
る可能性が高いです。
また表からひびが確認できない場合でも、壁に白い液だれの跡ができていれば(エフロッセン
ス現象)、これはコンクリート中に含まれるアルカリ成分が表に出てきたものなので、どこか
で雨水などがコンクリート内に浸入している可能性があります。
鉄筋まで達したひび割れを放置しておくと、鉄筋にできた錆が進行して錆により鉄筋が膨張し、
やがて周囲のコンクリートが剥がれ落ちてしまいます。
この現象を爆裂と言い、爆裂が起きたら周囲のコンクリートをはつり、鉄筋の錆を取り除くな
ど鉄筋の修繕をおこない、モルタルで埋め戻すという大掛かりな補修工事が必要となります。
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│クラック│→│水・炭酸ガス侵入│→│コンクリートが中性化│→│鉄筋を守る力が減少│
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↓
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│建物の耐力の低下│←│コンクリートの爆裂 │←│鉄筋が錆び膨張する│
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ひび割れの補修方法には、0.3 mm未満の小さいひび割れの場合はフィラーをひびに刷り込
み埋めます。
ある程度大きいひび割れでも、鉄筋まで到達していないなら、表面をU字に削ってシールを充
填し、モルタルで表面を平らに仕上げます。
鉄筋まで達するようなひびの場合は、エポキシ樹脂を注入して完全にクラックを固めてしまい
ます。
コンクリートのひびは自然現象として発生する以外にも、施工不良や構造不良等で発生する場
合があります。
これらが原因の場合は、ひび割れを発見しても予定の修繕工事はまだ先だからと放っておくの
は大変危険です。
ひび割れはその原因によってその後の劣化速度が大きく異なります。
したがって、異常なひび割れを発見したら、修繕業者や建築士などに見てもらい、その原因と
緊急の修繕を要するものかどうかを調査してもらわなければなりません。
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