∞∞∞■一級建築士設計製図試験を振り返って∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞《H23.11.10記》


 一級建築士設計製図試験から早一ヶ月余が経過し、合格発表までに一月余となりました。この間、皆
さんは、自分自身の計画や作図で、後悔することばかりだったのではないでしょうか。
「E&A」のチャレンジャーも皆さんに計画エスキスを発表してから、「あ〜っ!あそこを、あーすれ
ばよかった。こーすれば良かった。」と後悔だらけです。しかし、百点満点は時間内には出来ないこと。
時間の経過と共に、良い案は次から次に出てくるものなのです。試験では最高である必要は有りません。
課題の要求を大きく踏み外さないで、建築として成立する事(様になっている事)が重要ですね。

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H23年度の設計製図の内容についての感想

 今年の老健施設は機能がハッキリしているので、ゾーニングや動線は容易にイメージできたと思う。
要求事項もそんなに特別なものは何もなく、悩ますものは無かった。
課題でポイントと思われていた入所者と通所者の動線とゾーニングは、施設の重要な室である機能訓練
室と浴室B、レクレーションルームが入所者と通所者が共用する事になっていたため、あえて分ける意
識は必要ないであろうし、課題でもそれらの動線とゾーニングは問うていなかった。

 課題で問うていた動線とゾーニングは、利用者部門と管理部門に関してであった。この施設を考えた
とき、昨年の美術館と違い表と裏方がハッキリ分かれるような建物ではないことだ。純粋な管理だけの
部門は少なく、多くはサービスとして利用者との関わりを持って表に出てくる。サービスステーション
等はその典型だろう。

 問いかけられている以上答えなければならないが、一番難しいのが厨房の位置だろう。厨房は本来は
裏方だろうが、主要であるレクレーションルームや食堂への食事等の提供がある。レクレーションルー
ムや食堂は条件の良い南側へ配置するのが基本であろうから、それを考慮するとどうしても厨房が南側
寄りとなってしまう。
厨房は管理部門だから裏方として後方にまとめ、それに引きずられるようにレクレーションルームを奥
に引き込むのは愚の骨頂だ。建物の用途を考えずに原理原則ばかりにこだわると本質を見誤る。
回答を出すには、出題者の要望を的確に掴み、それに対して答えることだ。


【課題の要求事項】

今年の課題で、出題者のソフト面での要求は次の点だった。

1.入所者が明るく家庭的な雰囲気の中で共同生活が出来るように配慮する。
2.自然光を取り入れて明るく開放的な空間にする。
3.施設利用者部門と管理部門とを適切にゾーニングし、明解な動線計画と共に避難等に配慮する。
4.食堂、食堂・デイルーム、レクレーションルーム等の共用部は、自然光を積極的に取り入れる。
5.構造上安全であると共に、経済性にも配慮する。
6.環境負荷の低減に配慮する。
7.室の個別の要求は以下のとおり・・・
  @.食堂、食堂・デイルーム、レクレーションルームは明るく開放的な空間。
  A.記述の室に関連して必要な室や、その他必要とする室は適宜計画する。

 皆さんは出題者の要求をどのように捉えていますか?
課題文の中には、条件と要求内容が記述されています。具体的な条件はキッチリ守ろうとするが、漠然
とした要求は以外とスルーしてないだろうか。
上記の1〜7の要求で目に付くのは何だろう。明るく、自然光、開放的な空間が何度も出てくる。これ
が出題者が真に望んでいる基本方針なのだろう。実務でも、客が何を望んでいるか、素人の客では具体
的に希望を言い表せない。設計者である貴方が、汲み取らなければならないのだ。

 試験での合否は、出題者(発注者)の意を汲み、出題条件を守り、技術的に成立する計画を出した者
に与えられる。勿論、試験で全ての要求を満足することは誰にも出来ないが、出来るだけ人より減点を
貰わないようにしよう。
 
 条件は全てクリアした、建築的にもまぁまぁのプランだったのに落ちた。理由が分からない?
こんな人は廻りにいませんか。 もし、貴方が今回の試験でこれらの客先の要求を軽視したり、認識し
てなかったら、もう一度意識して計画をやり直してみて下さい。全く別の計画になるでしょう。

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【要求に対する回答】

 要求をハッキリ認識したとしても、配慮の度合いは人によって随分と違ってきます。だからこそ、計
画案は千差万別なのです。回答の優劣は出てくるだろうが、正解と言うものは無いと言えます。
これから、チャレンジャーはどういう気持ちで回答を作成したか再現します。先にお送りしたCAD図
を見ながら、計画の進め方、考え方の1つとして参考にして貰えればと思います。

1.の要求:家庭的な雰囲気の中での共同生活とは、ユニット型を思い出されたが課題ではユニット型
      でないので扱いに困った。運営上の問題と思いながらも、計画では木目の細かいサービス
      が行えるよう、サービスステーションの配置に気を付けた。中央に配置。

2.の要求:この要求はより強い要求と感じたので、外周の開口の他に中庭や吹抜を積極的に設ける事
      を第1に念頭に入れて、可能かどうか面積チェックで検討した。

3.の要求:北側隣接の病院からの支援等も考慮して、管理部門は1階の北にまとめるようにした。
      職員控室等は、回廊式廊下から奥まっ位置にまとめた。2階以上の階では、回廊式廊下の
      ため利用者の動線とサービス動線は共有する形だが、問題ないと考える。
      この施設でのサービス動線は、利用者を直接サービスする動線なので、いわゆる裏方とし
      ての管理動線ではないと考える。

      回廊式廊下とすることで、2方向避難を確かなものにすると共に、シンプルな形状にする
      事で容易に避難できるようにした。バルコニーや滑り台等の施設は、かえって避難経路を
      複雑にするし、運用上日常の安全性に問題があるので付けない事とした。回廊を吹抜に面
      する事で、より安全な避難経路になると考える。

4.の要求:主要3室は南側に配置し自然光をふんだんに取り入れる。その他の共用部も外部に面し、
      開口を設け採光が採れるようにした。一般的に廊下は外気に面しづらいが、中庭、吹抜を
      設けることで可能になる。

5.の要求:均等スパンで整形のフレームを心がけ、L字型の吹抜は大梁を架け渡すことで整形なフレ
      ームとした。経済性は極端な長大スパンを造らず、耐力壁を極力均等に設けることで構造
      部材の低減に努める。

6.の要求:プランには反映しにくいが、前々から考慮していた雨水の再利用やエネルギー効率のアッ
      プなどを、計画の要点や断面図で表現出来ればいいかな?

7.の要求:当初、開放的な空間を外部に開放された空間とイメージしたが、作図している内に、壁で
      仕切られた閉鎖的な空間でないと言う意味も有ると感じた。南面させ公園に面すると同時
      に、廊下と仕切のない空間とした。ただ、区画されないので、スプリンクラーの緩和は適
      用されないので迷ったが、サービスステーションなど現実に全ての室を区画するのには、
      ムリがあると察し、設備より計画を優先とした。
      その他の必要な室の設置は、大方の室は既に記述してあるので、まず必要な室を確保して
      余裕が有れば配置する事とした。厨房と食堂が分かれるから、まず、パントリーは必要だ。
      100名近い利用者に対して関係するスタッフは、設置基準からすると45〜50名にも
      なる。控室は休憩という意味だろうから、執務に必要なスタッフの室は設けた方が良いの
      だろう。また、守衛や設備技師の執務室などは有るに越したことはないが、きりがない。
      スペースに余裕が有れば設けることにする。


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【敷地及び周辺条件】

 旧試験制度ではあった東西南北の周辺状況の注釈は、新制度では昨年、一昨年に続き無くなった。
今後とも、注釈無しで図を示すだけになりそうだ。要は図から周辺の要点を汲み取れと言うことだろう。

1.2方道路:
  西が歩道付きでメイン。東のサブ道路は道路車線に注意だが、敷地幅が35m有りチェックのやや
  こしさはない。
2.北側は本施設の母体病院。
  管理上の行き来は予想されるが、開発上の条件が不明なため安全を期して往来は無しで進める。
  ゾーン的には管理部門を関連付けて配置したいところ。
3.東側集合住宅が近接。
  集合住宅のプライバシーは配慮すべきだが、あくまでもバルコニー側開口に対してで、覗き込むよ
  うな位置には開口は設けられない。
4.南側は公園。
  どのような公園かは不明だが、少なくとも視界を遮るものが無く視野が拡がり、樹木等も有ると考
  えて取り組めば良いだろう。
5.西側は歩道付き18m道路。
  メイン側として扱われる。集合住宅があるのでプライバシーには配慮は必要だが、東側より離隔距
  離が有る。

6.敷地はやや南北縦長。メイン側への顔を意識して基準階南北縦長か?
7.第一種住居地域なので、採光斜線は北側要注意。
8.建蔽率は80%有り、差ほど問題なし。

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【建築物】

 敷地面積と同様に床面積も想定された規模だ。A2版の用紙から推測するとほぼこんなものだろう。

1.要求室は、入所施設と通所施設との間に動線、ゾーンの整理を問いかけてくるかと思ったが、意外
  にも関係無しに共用する形式なので、神経は使わなくても良さそうだ。

2.共通施設を1階又は2階に設けるようにしている。利用者の流れ、サービス動線の流れを想定しな
  がら、割り振ればよいか。1階は通所者主体、2階は入所・通所共通、3階以上は入所者主体だが、
  スペースと相談しながら柔軟に対応。

3.3〜5階が基準階。事前の発表通りに4人部屋の(従来型)老健施設だ。ただ老健施設と発表して
  いて、ユニット型が出たら詐欺だ。詐欺罪で試験の無効を訴える積もりだったが、その必要は無か
  った。役所の仕事は堅い。

4.療養部門は各階に食堂を配している。施設の用途を考えれば予想通りの設定で、療養部門の内容は
  想定された内容で意外性は無く、療養部門(基準階)ではプランに差はでそうにない。

5.所要室は予想外の室もなく、平均的な室が設定されている。内容的には、事前に介護老人保健施設
  を学習していれば容易にイメージできる設定となっている。受験者に過度の負担を掛けないとは、
  このことだろうか。

6.会議室、洗濯室の特記事項に注意。一般的には管理部門だが、管理部門だけではなさそう。両方が
  使いやすい位置を検討すればいい。洗濯室の利用者は入居者の家族が利用するが、用途的には表舞
  台に出す室ではないな。水、お湯を使用するし、汚れの度合いによっては処分も考えられるから、
  汚物処理室の近くが良いのかな?

7.全体に全て想定内の設定で、プランは差ほど難しくなさそう。これでは差が出にくい課題だから、
  計画内容の善し悪しが影響しそう。勿論書き上げることだ条件だ。


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【その他の施設】

1.その他の施設は、送迎車両、車寄せ等特別なものは無い。車寄せは、敷地と建物の規模から考えて、
  ロータリー式は考えられないから、寄りつきスペースを考えれば良いだろう。

2.メイン側に利用者用駐車場、車寄せで幅3.5mが4台分のスペースはかなりのボリュームとなる。
  全て屋外とすると、建物はL字型の形状となり、面倒かも?別案として、1階はピロティー形式の
  駐車場とし、2階以上は整形のたてものにする手もある。

3.ゴミ置き場が記述されていないが、屋内にするか屋外かは別として、必要な物は必要だろう。
                                 (タケシ調)

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【留意事項】

建築@:バリアフリーは施設の用途からして当然のこと。エントランスの下足箱は要注意。履き替えな
    ので、段差を設ければスロープか。だけど、建物用途的には、段差を設けたくないところだ。
    実例にも有ったようにダスキンマットを敷き段差は無くそう。
   セキュリティは、エントランスの近くに受付を配し出入り監視する。各階のEVの出入りを監
    視するためにサービスステーションをEVのそばに配する。敷地周辺には、出入口を除きフェ
    ンスを設置くらいか。裏方の守衛室の設置は、有るに越したことはないがスペース次第だ。

  A、B、C:既に述べた。省略。

構造 :省略。

設備@:空調設備は自由でなく、空冷ヒートポンプマルチ型エアコンの指定がある。用途からして、個
    別空調主体で想定していたから意外性は無い。冷媒管用のPSが大きく又は数カ所必要だ。
    マルチだから、屋上に屋外機を設置。
   給水は受水槽方式であれば受水槽がいる。屋内にするか?屋外か?

  A:災害時に一定の機能?計画上どのように表現?(→計画の要点に記載)

  B:エレベーターは利用者用(寝台車用)、汚物搬出用、ダムウエーター(給食用)が考えられる。
    台数は難しいところだが、実例のこの規模では1台のところも有れば2台のところも有る。
    台数で減点は無かろう。スペース次第と言ったところか。

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【計画の要点】

 計画の要点の項目は、新制度から導入されたが、1年目が10項目、2年目が9項目、そして今年が
8項目だった。年々少なくなっているが、今後とも変わる可能性は感じる。試行錯誤が続くのだろう。
3年目の今年は、設備に関しての記述が例年と少し変わっていた。これまでの構造と設備に関しての要
点は、計画と関係無しに単なる知識を問うような形式が目立った。これでは、学科試験じゃないかと思
っていたのだが、今年は設計する上での注意点や配慮などを具体的に聞いてきた。
計画する上で、設計者はこのような事を配慮しながら計画しなければダメだよと言ってるようで、良い
出題だと感じた。
また、東日本大震災を迎えた今年は、Bの地震等の災害に関する項目は事前に考えられる項目だった。

 構造、設備に関しても計画に直接影響するようになれば、なお更のこと課題文を最後まで読み、計画
の要点項目を頭に入れて計画する事が重要になってくる。チャレンジャーは少し緩かったかなと反省し
ている。では、ここでチャレンジャーの計画の要点を評価してみよう。

建築@:駐車場は車を利用する人の起点になる。全てここから始まるので、空いたスペース適当に配置
    する物ではない。敷地利用の観点から、イの1番で検討する項目だ。ポイントは玄関にスムー
    ズにアプローチ出来ること。具体的には、玄関近く、段差解消、雨天時にも支障がない事。
      (チャレンジャーは利用者しか頭になく、サービス用駐車場の事が抜け落ちている。)
  A:レクレーションの役割をしっかり把握してなくてはいけない。入所者、通所者共に一堂に会し
    てと有る。共通して利用しやすい場所であり、かつ楽しい場所となると1階でエントランスホ
    ールに隣接し公園に面した場所が第1に優先候補になる。
     (チャレンジャーの記述は、動線計画が少し希薄で、明るく開放的な空間と聞かれもしないこと
    を書いている。お陰で、断面図を書くときに天井高さで迷ってしまった。)
  B:この施設では避難は重要な項目である。
   (避難に関しては、バルコニーや避難すべり台等を模試課題を通して学習した。これらを設けれ
    ば記述もしやすいだろうが、要求の回答−3で述べたようにチャレンジャーなりの見解が有っ
    たので、あえて設けなかった。吹抜けと一体となった回廊で充分に避難はなし得ると考えてい
    る。→この辺のところが、設計者のこだわりとなって表れてくる。もし、採点項目にバルコニ
    ーの有無、滑り台の有無で採点されると痛い。建築士試験は国家試験だ。その辺の資格学校と
    同レベルの採点はしないと確信している。バルコニーも滑り台も無くて合格した人のアンケー
    トを取りたいところだ。)

構造@:例年通りの項目となっている。
   (要求の中に経済性の配慮が有ったので無条件に耐力壁付きRC造としたが、こういう開口が偏
    った建物に耐力壁を設けるのは少ししんどい。無理して設けたが、時間を要したのは失敗だっ
    た。)
  A:より具体的な問いになっている。スラブ、小梁の役目を理解していれば記述は楽だろう。
   (チャレンジャーは伏図を検討する前に記述したので、食い違いが生じてしまった。吹抜けが構
    造的にL字型にならないように大梁を設けたので、回廊は跳ね出しにはならないのに跳ね出し
    小梁と記述してしまった。基準階の伏図は書かないので気が付かないかも知れない。失敗だ。)


      ■====■====■
      ┃ │ 吹抜1 │ ┃
      ┃B1│     │ ┃
      ┃ │ G1    │ ┃
      ■====■━━┫ ■
      ┃ │  ┃  ┃ ┃
      ┃B1│吹抜┃  ┃ ┃
      ┃ │ 2┃  ┃ ┃ 
      ■====■━━┫ ■ 

設備@:光熱費削減の方式・手法とその具体的削減効果を4つは、事前に準備しておかないとなかなか
    埋まらない。知識だけで記述すると図面その他と整合性が保てなくなるので要注意だ。
  A:騒音防止、振動防止などは、設備技師に対して建築士が指示又はチェックする項目。記述の項
    目としては良い課題と思う。
   (当初受水槽は屋外で考えていたが、要点記述で設置場所は、騒音対策は、と問いかけられたの
    で、急きょ屋内と書いてしまった。お陰で設備室が納まらなくは無いが、狭い感じはする。)
  B:事前に準備していた災害に対する項目が出た。構造編の「地震と試験の取組」で参考資料を提
    供したので読んで戴けただろうか。配管ジョイント、貫通部、機器基礎部の地震対策が書いて
    あったので、読者は旨く書けたと思う。
   (理解はしていたが、いざ文章となると旨くいかないと感じた。どうも舌足らずだ。事前に準備
    をしていたコージェネをどうにか記述したくて非常時電源の積もりで書いたが、地震時のガス
    遮断の場合は、LPGボンベを非常用に準備するとしておけば良かった。ボンベ庫を計画して
    いなかったので、とっさに支障がなければと弱い表現になった。今年のような課題で有れば、
    エスキスの前に有る程度要点記述の方針を立てなければ、後戻りが出てしまう。)


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【作図】

 今年は平面図が1面多い。どの位大変か体験してみた。残り持ち時間3.5時間で、鉛筆での作図に
チャレンジしてみた。
3・5時間有ればどうにか書き上げられるかなと思いながら進めたのだが、最初でつまずいてしまった。
と言うのは、チャレンジャーの案は、縦35m横26mの中庭の有る5階建ての建物だ。寸法線を入れると
用紙に入るかどうか際どい大きさで、図面の配置に随分と時間を食ってしまった。
実際の試験では敷地が印刷されているので、この案で旨く配置できるのか不安になった。少なくとも、
2階、基準階は1階図面とずらさなければ納まらないだろう。作図量の増加が、時間だけでなく作図ス
ペースにも、諸に影響が出てきたのだ。

結局のところ、部材表、面積表を残してのタイムオーバー。・・・失格と相成った。

 元々、チャレンジャーにとっては久しぶりの鉛筆書きだ。昔取った杵柄といえ、作図のリズムは非常
に遅い!図面は丁寧だが、早く書こうにも目と手が言うことを聞かず、集中力と根気が無くなってしま
った。計画は合格レベルと確信しているけど、この作図のスピード力では、一級試験は何度やっても無
理だなと思ったところだ。(既得で良かった!再受験はムリ、ムリ、ムリ!)


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建築士資格試験の作図について

 上記のような製図試験体験で、今年の一級建築士設計製図試験、更に今後の建築士試験に疑問を持っ
た。本来、今年のようなボリュームで作図を完成し終えるのは容易なことではない。しかしながら、受
験者の多くは書き上げたと聞いている。それは、受験に当たって、何枚も何枚も数多くの図面を書き上
げた受験対策の賜物だろう。そのために、日頃書くこともない鉛筆での作図を、何枚も何枚も書く事を
強いられている。確かに、「E&A」のチャレンジャーも何枚も練習しぶっつけ本番でなければ、たぶ
ん書き終えただろう。ただ、CADで作図することが一般的な現代に於いて、それほどに修練を積まな
ければならない建築士の製図とは何なんだろうと思ってしまう。

 建築士の試験は、建築を志して、それなりに建築教育を受けた者がその技量を試される試験だが、手
書き製図の技量は、CAD時代以前に於いては重要な業務の1つではあった。しかし、現代に於いては、
建築士の試験の為だけに有ると言っても良い。受験を前にして始めて製図板なるものを触る者が大半な
中で、受験者はそれに慣れ、時間内に書き上げる事を強いられる。昔と違って作図に対する負担は比べ
ようがない。

 指導校に於いても、書き上げて何ぼのものとばかりに、計画の中身はそこそこに書き慣れる為の指導
を行い、試験までに何枚も何枚も書き上げる事を強いている。受験生も思考よりも機械的に手を動かし、
ただ書き上げることが目的化しているのが現状だ。受験者は、そのためだけに高い授業料を払って指導
を仰いでいる。指導を仰ぐと言うよりも、製図体験の場と時間を提供して貰っていると言っていい。

 指導校は、建築や設計を教えるのでなく、時間内に書き終える術を身につけさせることのみを目的に
指導していると言って良い。色んなパターンを体験させ、その中の1つでも本試験課題に近いものが有
れば、それを参考に時間内に完了させる事が出来るだろうと思っている。「下手な鉄砲、数打ちゃ当た
る。」の口だ。色んなパターンを経験させようとする余り、本質から外れた課題も登場する。それは、
基本をねじ曲げるだけでなく、受講者を惑わせる結果にしかならない。

 だが、計画力は上がら無くても、数多く作図することで作図力だけは確実に上がる。計画力を上げる
のは容易なことではないが、作図力は誰でも枚数をこなせば確実に上がる。今や、建築士試験は不通の
製図力では合格しない。以前に比べれば作図の量が半端でないからだ。早い話、計画力よりも作図力が
優先するような試験なってしまった。日本国の建築士の試験がこんなので良いのだろうか。真剣に考え
て貰いたい。

 平成21年、建築士の試験改革に当たって、中央建築審査会は次のように試験制度の変更を示した。

○ 専門分化している建築設計を調整し、取りまとめていく基本的な知識・能力等を確認するために、
  ・ 合格基準の設定に関し、配点構成を「空間構成(*1)」と「意匠・計画(*2)、構造、設備」
    に大別し、「空間構成」に関し、足切り点を設定するものとする。
   (*1):建築物の配置計画、ゾーニング・動線計画、所要室の計画、建築物の立体構成等
   (*2):図面表現、所要室の機能性・快適性等

○ 現在の試験内容と比較して、受験生に過度な負担を強いることのないように、
  ・ 「設計課題(設計対象の建築物)」に関し、異なる機能を複合させた建築物を出題する従来の
    方式を改め、比較的シンプルな用途の建築物(主たる機能の部門とこれに関連する部門からな
    る建築物)とするなど、ゾーニングや部門間の動線に関する設計条件を簡素化した出題とする。

  ・ 要求図面は、配置図、平面図、断面図、立面図、伏図、矩計図等の図面のうちから4面程度と
    し、その他に計画の要点等(1問あたりの記述のボリュームは従来と同程度とし、10問程度)
    と面積表を要求する程度とする。

 試験作成元は、上記の中央建築審査会の主旨を尊重し、試験を進めて貰いたい。作図のボリュームが
余りにも多すぎる。そのために、建築士の資質とは余り関係のない手書き作図に、どれだけ多くの時間
と労力を費やしているかを知るべきだ。そのためにどれだけ多くの金を支払っているかを知るべきだ。

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◆試験から1月余が過ぎ、今は虚ろな気分でいませんか?なーんにも考えたく無い。そんな気分だと思
 います。学科も製図も資格取得に向けて一生懸命に努力した事は、合否に関わらず決して無駄ではな
 いと思います。「E&A」の一級建築士受験サポートを添付サイトを含め最初からご覧になっている
 方は、試験で力を出せたのではないかと思います。1ヶ月後には、読者の皆様の良い結果を心から待
 ってます。

◆「E&A」の一級建築士サポートは、広告収入でお送りしています。トップに戻り「アフリエイト」
 をご利用していただくと有り難いです。
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