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◆◇◆ ☆建築雑知識 006号
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■■■■■ Engineer & Architect group 建築企画
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■住宅性能表示の評価基準(1)構造の安定−その4■
新築の場合は現在施行されている新耐震基準で設計されますので、そこそこの安定
性は確保されると考えます。
南海、東南海地震が30年内に起こる確率が50%と報道される時に、既に建てら
れた建物にお住まいの多くの皆様は、ご自宅がどの程度の耐力があるかご心配のこ
とと思います。
今日は既存建物に関して述べていきます。
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【耐震自己診断】
(1).建てられた年代から判断する法
構造の強度を決める基準がこれまでに何度も変わってきたことは既に述べました。
現在施行されている新耐震設計基準は、先の「神戸淡路大震災」でも有効性を実証
されています。
新耐震設計基準が施行されたのが1981年(昭和56年)ですから、新法への移
行期間を考えると、竣工した年度は1982〜1983年位前の建物は一応警戒が
必要となります。
(2).間取りから判断する法
新耐震設計基準と言う言葉が何度も出てきますが、新耐震基準は1978年(昭和
53年)宮城沖地震を教訓に改訂された基準です。
宮城沖地震では、建物の重心に偏りが有る建物に多くの被害が出ました。
重心の偏りとは、簡単に言うと壁の量が1部分に偏っている場合です。下のプラン
を見て下さい。
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道路 左の図はビルの1階の略平面図です。
─┬───────────┬── 左上の囲われた部分は階段やエレベー
│┌─┬─┐ ・ ・│ ターや階段などで壁で囲われています。
││ │ │ │
│└─┴─┘ ・ ・│ ・ 印は独立柱を示します。
│ │
│・ ・ ・ ・│ 重心に偏りがあるとはこのように、壁
│ ピロティー │ の配置が一方に偏っている状態を言い
│・ ・ ・ ・│ ます。
└───────────┘ ピロティーとは、駐車場などの柱だけ
で出来た壁無しの空間です。
<略 平面図>
壁で囲われた部分は柱と壁でガッチリとスクラムを組んでますから、単独の柱より
も強度的に強くなります。そのために建物は左上を中心に捻れてしまいます。
このねじれの概念はこれまでの地震では有りませんでした。
と言うのは、これまでの建物は捻れる前に倒壊していたのです。
何故ねじれるようになったかと言いますと、これ迄に何度も地震を経験し建物はそ
の都度丈夫になってきました。
それまでの建物は耐力が無いのですぐにペシャと潰れていたものが、有る程度耐力
が付くと建物が粘り腰を見せ、粘っている内に弱い単独柱がクシャって潰れたので
す。
ラグビーをご存じの方は何となくイメージが出来るのではないでしょうか。
丈夫に成ったらなったで、新たな問題が発見されたと言うわけですね。
新たな問題が建物の偏重、つまり壁の偏った配置なのです。
このように、間取りで壁が偏って設けられている場合も要注意です。
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【偏重防止策】
新耐震の設計では、鉄筋コンクリート造で壁がバランス良く配置されない場合は、
コンクリートの柱と壁が一体と成らないように、わざわざスリットを入れます。
柱と壁のスクラムを解くことで、部分的に強い個所を造らず捻れを防いでいます。
┌──┐ ┌──┐
壁───┘柱 └──壁 → 壁───┤柱 ├───壁
───┐ ┌── ───┤ ├───
└──┘ └──┘
旧基準では柱と壁が一体 新基準では壁の配置が一部に偏る
時は、壁と柱を切り離す。
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【住宅は偏り気味】
住宅は日々の生活を送る場所ですから、日照、通風、採光などを考え建てます。
そうすると、どうしても南側を広く開けたプランに成り、必然的に南側に壁の少な
い建物に成ってしまいます。
一方、北側は浴室や階段、トイレなど小さく仕切られた部屋が配置され、壁の量は
南に比べて圧倒的に多くなります。
住宅の場合は、どうしても偏重の気味の建物に成ってきます。
Q:「では新耐震で設計した建物は南の窓を小さくしなくてはいけないの?」
A:住宅は構造だけでプランニングする訳ではないですね。
プランは皆様の生活にあった生活重視のプランにすべきです。
現在の間取りが気に入らない場合は別として、補強のために間取りを変える事
はありません。既存の柱、壁を補強すれば良いでしょう。
木造や鉄骨の場合は、壁と言っても筋交いなどの斜め材が入ってない壁は構造
的には弱いものです。
そう言う壁に斜め材を入れたり、柱と梁を補強用に開発された金物でガッチリ
と固定するのです。
鉄筋コンクリートの場合は、少し複雑ですが耐震診断計算により方針を決める
ことになります。
概念としては柱を鉄板や炭素繊維シートで巻いて補強したり、壁に鉄骨の筋交
いなどを入れて補強します。
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◆建物は一部分でも弱いところがあると、全体が影響を受けます。やはりバランス
が重要と言うことでしょうか。
◆神戸淡路大震災以来、新耐震基準以前の基準で造られた学校建築の耐震補強は、
着々と進んでいます。
皆様のお子さまの学校でも既に完了しているのではないでしょうか。
学校建築の補強工事を真っ先に進めたのは、次世代の子供たちを守ると共に、地
震が起きた時に学校が地域の重要な拠点になるからです。
拠点と言えば、政府の首相官邸が新しく建て替えられたのはご存じと思います。
年度予算を消化するような必要もない道路の掘り返しが批判されていますが、こ
のような重要な工事はもっと進めて貰いたいですね。
皆様の住宅に対して、耐震診断費用には補助を出している自治体は多いのですが、
補強工事に補助を出している自治体は無いようです。
このような有意義な工事に対しては、予算を付けて貰いたいものです。
狂牛病対策でもしかり、起きてから対策予算を付けるより、起きる前に予防予算
を付けた法が遙かに安く済むと思うのですが、皆さんどう思います。
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★用語の説明コーナー★
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耐震補強・・・既存の建物を新耐震基準に合致するように補強すること。
補強技術は大変進んでいて、神戸での崩壊ビルも建て直すこともなく見事に復旧
しました。
潰れたと言っても建物全部が粉々に潰れたわけでなく、1階の柱とか建物の一部
が潰れただけで他はそのまま残ってるので、潰れた部分を撤去しその部分に補強
された新しい柱を造るのです。
炭素繊維シート・・・炭素繊維で造られたシートで、軽く鉄以上の強度があります。
炭素繊維と言えばゴルフのシャフトや釣り竿などで知られて
います。その他の特徴として、電磁波を吸収・遮蔽する働き
や、耐薬品性、耐熱性の有る優れもの。
耐震補強ではシートを包帯のように巻いたり、湿布薬のよう
に貼って補強します。
下記のURLで耐震補強現場の様子が分かります。
http://www.dnc.co.jp/technology/08mars_02.htm
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★編集あとがき★
大震災が予測される中、もっと構造のことを取り上げなければならないのですが、
次回から2番目の項目「火災時の安全」をテーマに移ります。乞うご期待!
尚、質問等が有りましたら、どしどし下記へ E-mail下さい。
前回取り上げました「この建物大丈夫?」と言う漠然とした質問は、大抵の場合は
「地震の事は置いといて、単に建物を使用していて潰れないか?」と言う質問のよ
うですね。地震は不可抗力と言うことで、その時は諦めると言うことでしょうか?
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『建築雑知識』は建築技術者と建築家のグループ
「Engineer&Architect group建築企画」
が「建築を愛する皆様」へお送りします。
編集発行:E&A建築企画 事務局
E-mail:jim@kentiku-kikaku.com
URL: http://www.kentiku-kikaku.com/
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