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建築知識
 
007号



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  ◆◇◆                          ☆建築雑知識            007号
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 ■■■■■ Engineer & Architect group 建築企画
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■住宅性能表示の評価基準(2)火災時の安全−1■

 構造基準は雪国には雪国に合った基準がありますが、火災については○○地方は火
 災が発生しやすいから特別に厳しい基準と言うことはなく、全国どこでも同じ基準
 です。
 でも、地方での差はなくとも建物の集中地区とそうでないところの差は有ります。
 出火の比率は同じとしても、密集地区は一度火災が発生してしまうと廻りに類焼し
 てしまい大きな被害となります。
 そこで、都市計画法では密集地区を防火地域、集中地区を準防火地域として防火指
 定地域を定めています。

 住宅性能評価では都市防災と言うより、個々の住宅がどの程度安全かを問題にして
 いますので、地域での評価はありません。

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【住宅における火災の実体】

 まず、「火災という敵を知り己を知れば百戦危うからず。」ではないでしょうか。
 火災のことを学びましょう。

●住宅の火災件数・・・16,635件(放火を除く)

        この数字だけを見ても実感が湧きませんね。
        この16,635件という数字は一万世帯当たり、1年間で約3.7件にな
        ります。仮に住宅の寿命を30年とすると、90軒に1軒の割合で火災
        に遭遇するという数字です。

(廻りをぐるりと見渡しこの中の1軒が火災に遭うと考えると嫌な感じですね。)

●住宅火災による死者数・・・865人(放火自殺者等を除く)
        この数字は交通事故の割合からすると1桁少ない数字で、地震・台
        風の自然災害(神戸・淡路大震災を除く)と比較すると1桁多い数
        字と成ります。

●出火場所・・・戸建住宅:居室(41%)、台所(34%)、廊下(9%)その他(16%)
        共同住宅:居室(35%)、台所(26%)、廊下(26%)その他(13%)
        戸建ても共同住宅とも居室や台所の日常空間での発生が大半を占め
        ていますが、廊下を比較すると共同の比率が極端に多くなっている
        のが特徴です。
        共同住宅の場合自分の住戸だけでなく

●共同住宅での出火場所と死亡場所の関係
        出火場所付近(95%)
        出火場所以外( 5%)

        火元の方が逃げ遅れて亡くなられるのは理解できますが、共同住宅
        の場合、出火場所以外の住戸の方でも5%も無くなっている事が注目
        されます。
        戸建て住宅で有れば、自分の住戸の火災さえ気を付ければ命まで失
        うことは無いのですが、共同住宅で有れば住戸内の火災だけでなく
        共用廊下や他人の住戸からの出火からも命を落とすことにも成りま
        す。1つ屋根の下で暮らす恐ろしさでしょうか。

※尤も、共同住宅と1つでまとめられていますが、同じ共同住宅でも鉄筋コンクリー
 ト造の共同住宅は耐火壁、耐火床で住戸が囲われていますから、火災には最も安全
 な住戸と言えます。

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【火災時の安全基準】

 皆様は火災の基準となると次の項目が気になるのではないでしょうか?

 1)自分の家が火事になりにくいか。
 2)万が一火災になっても安全に逃げられるか。
 3)近隣に火災が起きにくいか。
 4)近隣の火災で、生命の危険に巻き込まれないか。
 5)近隣の火災でもらい火をしないか。

 性能評価の基準は、「安全」を基本に置いています。
 皆様の期待に反して、(1)、(3)、(5)は性能基準から除外されています。
 いわば、火災報知器がどれくらい整備されているかの評価と言っても過言ではあり
 ません。

 住宅性能評価の火災に関する項目は、皆様の期待と大きく懸け離れていますので、
 これ以上の説明は控えます。

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【火の無いところに煙が立つ】

「No fire without some smoke」は英語の格言ですが、日本にも同じ格言があります。
「火の無いところに煙は立たない。」
 意味はご存じの通り「原因もないのに噂が広まることはないよ。」と言った所でし
 ょうか。
 ここで扱う「火の無いところに煙が立つ」は、格言と全く関係ない話です。
 読んだそのままの「火の無いところから煙が立ち、その内に火が出て火災になる話」
 です。

残念ですが、今回は長くなりますので次回に回します。期待して下さい。

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★用語の説明コーナー★
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 耐火壁(床)・・・鉄筋コンクリートなどの火に強い構造の壁や床のこと。
          ALC版やコンクリートブロックなども耐火壁になります。

☆建築基準法では、学校、病院、劇場、ホテル、デパートなど不特定多数が利用する
 建物は、用途上から火災に対して耐力のある建物(耐火建築物)を要求しています。
 また、市街地密集地区(防火地域)に在る一定規模以上の建物に対しても、用途に
 関係無く耐火建築を義務づけています。
 この耐火建築物とは、耐火壁や耐火床で造られた建物のことです。
 鉄骨造でも鉄骨を耐火性能のある材料で被覆することで耐火建築物になります。
     
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★編集あとがき★
 住宅性能評価の「火災時の安全」は、皆様の関心事のほんの一部分しか扱って居ら
 ずガッカリです。

 今後、☆『建築雑知識』では、住宅性能評価以外に火災に関する興味深い事柄を取
 り上げていきます。
 今回は紙面が長くなってしまいましたので次回にしますが、「火のないところに、
 煙が立つ」他をお送りします。乞うご期待!

 尚、質問等が有りましたら、どしどし下記のアドレスへmail下さい。

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『建築雑知識』は建築技術者と建築家のグループ
「Engineer&Architect group建築企画」
  が「建築を愛する皆様」へお送りします。
                       編集発行:E&A建築企画 事務局
                         E-mail:jim@kentiku-kikaku.com
                         http://www.kentiku-kikaku.com/


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