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建築知識
 
009号



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  ◆◇◆                          ☆建築雑知識            009号
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 ■■■■■ Engineer & Architect group 建築企画
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■住宅性能表示の評価基準(2)火災時の安全−その3■


【火が出たら、まず初期消火?それとも逃げる?】

住宅の火災は、ほとんどが注意をすれば防げるものです。でも、ついうっかりするの
が人間ですね。
先日もホームパーティーを開いていた住宅で出火し、幼い子供たちが逃げ遅れて多数
亡くなりました。原因は1階で料理していた揚げ物の火を止めるのを忘れてしまった
ためのようです。
ここの主婦はいつもと違う慌ただしさの中で、つい火を止めるのを怠ったのでしょう。
そのまま2階で話し込んでいる内に火災になり、2階に火が廻って初めて火災に気が
付き、そのときはもう既に手遅れだったようです。

この時階下の火災に早く気が付けば、2階建ての住宅のことですから子供たちでもど
うにか逃げることは可能だったはずです。
このお宅の台所に、せめて火災報知器が備えてあったらと残念に思いました。
火災の発生を早く知れば初期の内に消すことも可能ですが、遅れると火災はどんどん
大きくなり逃げることさえ出来なくなってしまいます。

住宅性能評価を「火災時の安全」から考えた場合、私たちは燃えにくい建物が評価が
高いだろうと思いがちですが、住宅性能評価では火災の発生をいち早く知ることが出
来る建物が評価の高い建物なのです。
建物はたとえ燃えない建材だけで建てたとしても、所詮私たちの住まいの中は燃える
物で満ちあふれています。家具、寝具、衣類、書籍、家電、玩具等々、見渡して燃え
ない物を探す方が難しいほどですね。

こうして考えると、「火災時の安全」で住宅性能評価が火災の発生を早く知ることに
重点を置いている意味が分かるような気がします。
私自身も、当初は「住宅性能評価が火災報知器の設置状況により等級を決めている。」
と知ったとき、何と馬鹿げた基準だと思った物ですが、こうして火災のことを調べて
いくと『早期発見、初期消火そして早期避難』がいかに重要かが分かりました。

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【火災報知器って、どんなん?】

ところで、火災報知器っておわかりですか?
大勢の人が集まるデパートや公共の建物では必ず設置されています。天井を見ると白
く直径10cm位の丸い物がが付いています。それが自動火災報知器の一部です。
自動火災報知器は感知器と受信機から成り、天井に付いている物は感知器の部分です。

まず、感知器が火災を感知し信号を受信盤に送ります。受信盤は信号を受けると警報
を鳴らし火災であることを知らせると共に、自動的に他の排煙装置や防火シャッター
等の防災機器に火災信号を送る役目を持っています。

住宅でもこのシステムは良く取り入れられています。単独の火災報知器としてでなく、
インターホーンなどの他の電信的な機能と一体となって設置されていますね。最近の
ものは火災になると「火事です!火事です!」と音声で知らせます。
皆様のお宅にも付いているのではないでしょうか。

この感知器は用途によりいろいろなタイプが有るのですね。仕組みも面白いですよ。

1.熱感知器

 a.定温式・・・75℃や65℃などの一定の温度になると作動するもの
       (膨張率の違う2枚の金属板を張り合わせてあり、温度が上がると
        この板は反り返り、他の金属に触れてスイッチが入るようになっ
        ています。金属の種類によって設定温度が変わります。)

 b.差動式・・・定温式ですと、いつも温度の高い所では火事でもないのに絶えず警
        報が鳴り放しと言うことになってしまいます。
        そこで、一定の温度でなく、火災の時は通常の温度より急激に温度
        が変化する性質を取り入れたものです。
        機器の中の空気は普段は小さな孔を通して外部と出入りしてますが、
        急激に暖められると膨張し小さな孔から外に出きれずに機器の中で
        膨らんでいきます。その時ダイヤフラムと言う隔膜を押し上げスイ
        ッチが入る仕組みです。

 ※その他にも感知線型感知器というものも有ります。これは被覆された2本の電線
  を螺旋状に撚ったもので、一定以上の温度になると被覆樹脂が溶けだして電線同
  士が接触してスイッチが入る仕組みです。わざと漏電させるわけですね。


2.煙感知

  火事は炎だけが危険な訳じゃないですね。煙や有毒ガスが生命には最も危険です。
 温度は上がらなくても、けむりや有毒ガスが忍び寄ることも有ります。
 そんなときは熱感知器では間に合わないことになります。

 a.イオン式・・・機器の中には絶えずイオン電流を発せさせています。機器の中に
         煙が入ってくると煙の中の燃焼生成物でイオン発生が妨げられ、
         これをイオン電流の減少として感知します。

 b.光 電 式・・・煙の微粒子による光の反射を利用したものです。
         機器の中には光源があって数秒おきに光を点滅しています。
         一方、迷路になった先に受光素子が有りますが、通常はこの迷路
         では空気は通すが光は通さない仕組みになっています。
         ところが火災になり煙がこの迷路に入り込むと、光は煙の粒子に
         反射しながら奥の受光素子までたどり着いて感知します。

 ※光電式の中には発光部と受光部が別々の機器に分かれ、それを離して設置するも
  のも有ります。発光部から受光部めがけて絶えずビームが出ていますが、煙の粒
  子がこのビームを遮断すると感知するというものです。
  防犯警備等の機器もこの種の応用ですね。


3.赤外線感知器
  紫外線感知器

  これらは共に火災の炎から発せられる赤外線や、紫外線を感知するものです。
  紫外線や、赤外線は火災時に関わらず照明器具などの日常の身の回りにあふれて
  いますが、火災との識別は火災の時の「ちらつき、ゆらぎ」で識別します。
  でも、太陽光も「ゆらぎ」が有るので日光が指すところは使えないそうです。


※住宅用では使えない特殊なものも有りますが、世の中には色んな条件の下で作動す
 る火災感知器が開発されているのだなと「ワカッテ頂けたでしょうか?」
 (NHK「ためして合点」風)
 いずれにしても、感知器は場所にあった機器と、機器の安定性が重要です。せっか
 く感知器を付けたのに誤報ばかり続くので、うるさいくてスイッチを切っていたら
 火災になってた時には役に立たなかった。なんて事にならないようにしたいですね。

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自動火災報知器をヴィジュアル的に知りたい方は
http://www.hochiki.co.jp/frame/pro.html

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【世界貿易センター火災】

前半の感知器の話から繋がりのない話になりますが、「世界貿易センターの火災」を
扱います。

先の号で、「世界貿易センターの崩壊は火災でなく単純に積載オーバー」とのコメン
トを書きました。
根拠は、ジェット機の重量とビルが支えられる構造上の耐力を考えてのものです。
(まだ、読まれていない方は5週ほど前のバックナンバーNo4をご覧下さい。)

重量オーバーが崩壊の主原因と考える根拠にはもう1つ有ります。
旅客機がぶつかった時、すぐに火災になりました。ジェット機には最も引火しやすい
燃料が積まれていたのですから当然のことです。

通常高層ビルは鉄骨造ですが、鉄骨は高温に曝されると飴のように曲がり、構造上の
耐力は急激になくなります。
そのために鉄骨造の建物には耐火被覆します。耐火被覆はケイ酸カルシューム板等の
不燃材で厚さ25mmから50mmmのものを使います。

耐火被覆をしているから火災にあっても大丈夫・・・では無いのです。耐火被覆して
いても長時間炎に曝されると、熱が徐々に伝わり内部の鉄は変形してしまいます。

日本とアメリカとの基準は違うでしょうが、日本の場合は2時間の耐火性能を要求し
ています。2時間の耐火性能とは、炎に曝されても変形することなく、その間に中の
人々は逃げ出せるとした時間です。

ところが、ニューヨークの世界貿易センターは僅か40分ほどで崩壊してしまいまし
た。基準が違うと言っても僅か40分ほどでの崩壊は、火災による原因が主原因では
ないと考えます。

一般論としては、旅客機衝突により構造材がダメージを受け、さらに火災で構造耐力
が無くなり崩壊したとしてますが、ビルが真下に座り込むような形で崩壊したのを見
ると衝撃を受けた柱が変形したものでないと考えます。
衝撃が主原因としたら、ダメージを受けた側に傾き倒れるように崩壊したのではない
でしょうか?
皆様はどう考えます?

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★用語の説明コーナー★
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耐火被覆・・・建築基準法びよると、不特定多数の人々が利用する建物(特殊建築物)
       や防火、準防火地域にある建物は、階数や規模により耐火構造としな
       ければなりません。
       鉄筋コンクリート造は耐火建築物になりますが、鉄骨造はそのままで
       は耐火構造には成りません。
       耐火性能のある指定された材料で囲って初めて耐火建築に成ります。
       耐火被覆はケイカル板等のボード類が多いですが、小規模のものには
       ラスモルタル塗りも使われます。
       被覆の厚みは耐火性能によって違いますが、最上階から数えて4階ま
       でを1時間、5階以上の部分を2時間耐火の性能を要求しています。

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★編集あとがき★
「世界貿易センター火災」は耐火性能の説明を先にすれば良かったのですが、テロ
事件から1年を迎えたので先に扱いました。
耐火性能は用語の説明で少し扱いましたが、又の機会に扱います。

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『建築雑知識』は「不正・不良工事の撲滅運動」を進めている建築技術者と建築家の
 グループ「E&A」が「建築を愛する皆様」へお送りしてます。

 詳しくは、下記URLをご覧下さい。

                      編集発行:E&A建築企画 事務局
                        E-mail:jim@kentiku-kikaku.com
                    URL: http://www.kentiku-kikaku.com/


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