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建築知識
 
010号



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  ◆◇◆                          ☆建築雑知識            010号
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 ■■■■■ Engineer & Architect group 建築企画
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■住宅性能表示の評価基準(2)火災時の安全−その4■

【火事だ! 逃げろ!】

 本当に初期の状態でしたら消火に努めるべきでしょうが、それでも手に負え
 ない時は通報し逃げることですね。あわてずに命の次に大事なものを手に逃
 げましょう。
 あれも大事これも大事とやっていると、前に言いました「フラシュオーバー」
 で一気に火の手が回り逃げ場を失う結果になります。

 戸建ての場合は周囲に開放されて、また階数も少ないのでどうにか逃げられ
 ますが、共同住宅の場合は玄関側とバルコニー側に限定され、場合によって
 は火の手に妨げられ孤立する場合があります。

 住宅性能評価基準では、こういう共同住宅での特殊性を考えて共同住宅にの
 み「避難安全対策」という項目を設けています。
 避難経路が煙で充満し避難途中で倒れてしまうことの無いよう、廊下の排煙
 状態や階段の位置で評価が違ってきます。

 避難の基本は1つの経路がふさがれても、もう1つの経路が確保されること
 です。
 共同住宅では階段が2つ有るのが基本ですが、5階以下や1フロアー当たり
 4戸程度の共同住宅では、外部階段が1つというケースもあります。
 その場合はバルコニーがもう1つの避難経路になります。バルコニーにある
 避難タラップを使って地上に逃げるのです。
 でも、この避難ハッチを使って逃げるのも怖いですね。高所恐怖症の私なん
 か避難訓練でも決して体験しません。60cm四方の穴からそのまま下に落ちそ
 うな感じです。
 いざ火事となり、避難ハッチしか逃げ場がないときは、そんなことは言って
 おれないでしょうが、怖いですよ。

 共同住宅にお住まいの皆様は、バルコニーは大事な避難経路ですから荷物な
 どを置いて逃げてを塞がないようにしましょう。それと避難ハッチは各戸に
 は有りませんから、どの住戸にあるか頭に入れとくことも必要です。


【廊下巾は充分か?】

 作年の夏、明石市の花火大会で大惨事は記憶に新しいところですね。
 連絡路は巾6mと連絡路としては割と広く、相当の通行量は可能だったはず
 でが、その先の階段は巾3mと狭く構造上の欠陥も指摘されています。

 しかし、構造上の欠陥と言うよりも、両側から押し合い状態になってニッチ
 もサッチも行かなくなっての惨事でした。
 この場合、たとえ通路巾が半分になって通行量が落ちたとしても、行きと帰
 りを2つにセパレートすべきだったでしょうね。やはり管理上の問題だった
 と考えます。

 超高層建築物を設計する場合は、人間工学から導き出された計算式によって
 廊下巾や階段巾を決めるようになっています。
 1分間に移動できる人の数は、巾によって限られているのです。
 この計算式は、あくまでも一方向の流れの場合の計算式ですから、明石のよ
 うに両側から押し合いになったのでは、この計算式は意味を持ちません。
 イベント管理者はこれを教訓に、万全の対策を講じて運営してもらいですね。

 超高層建築物というとニューヨークの世界貿易センタービルに話を移します
 が、惨事の時何千という人が階段を使って逃げたことになります。崩壊まで
 の40数分で逃げおおせたのでしょうか?
 それは無理です。結果として数千名の方が亡くなりました。

 階段は高層になればなるほど、普段は見向きもされません。でも、こういう
 いざと言うときに絶対必要なものなのです。エレベータだけでなく、階段も
 位置だけでも思い出してやって下さい。


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【デパートの階段が広い理由】

 デパート火災は他の建物と比較して、一度発生すると大惨事に成る可能性が
 非常に高いですね。

 1.可燃物が多いこと。
 2.大勢の人が集まる場所であること。
 3.1フロアーが大きく避難経路が長いこと。
 4.通路が複雑で、迷路になっていること。・・などが原因と考えられます。

 そこで、建築基準法では1500m2を越える店舗の場合は床面積に応じて階段巾
 を決めています。100m2当たり60cmですから結構な巾になります。
 また、どの位置からでも 30m以内に階段に行けるように階段を設けるように
 なっています。

 せっかく設けられていても、普段使わないからと言って荷物で塞いだりして
 は意味がありません。建物の防火管理者は注意して下さい。
 もし、そう言う現場を見たら「殺すつもり?」って抗議しましょう。

 これは住宅性能とは直接関係有りませんが、これからデパートに出かけるこ
 とも多いと思いましたので、ついでに一言。


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★用語の説明コーナー★
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避難ハッチ・・・共同住宅ではバルコニーの床に設置されています。
        上蓋を開けると中に折り畳まれたタラップが収納されていて、
        上蓋を開けると自動的に下蓋が開き、中のタラップが下の階
        に垂れ下がる構造になっています。材料はステンレス製で、
        チェーンにステップが付いた物が主流ですが、ゆらゆら揺れ
        ないようにパイプの芯が下に伸びそれにステップが付いた物
        も有ります。

        避難ハッチは消防法に基づいて付けられています。必ずしも
        一住戸に1個付いている訳ではありません。
        隣の住戸との堺にある隔て板を破って、避難ハッチのある住
        戸まで逃げなくてはなりませんので、避難ハッチのある住戸
        の位置は知っておきたいですね。

 詳しくは、 http://www.oriro.co.jp/teika/teika2.htm

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★編集あとがき★
先日大阪では唄や映画で有名になった法善寺横町が、隣地の解体工事中にガス爆発で
延焼するという事故がありました。火災は自分のところでいくら気を付けていても、
よそからの火災で消失することが有ります。
これから火を使うことが多くなる季節を迎えますので、皆様も充分に機を付けて下さ
い。
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『建築雑知識』は建築技術者と建築家のグループ
「Engineer&Architect group建築企画」
  が「建築を愛する皆様」へお送りします。
                       編集発行:E&A建築企画 事務局
                         E-mail:jim@kentiku-kikaku.com
                         http://www.kentiku-kikaku.com/


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