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建築知識
 
011号



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  ◆◇◆                          ☆建築雑知識            011号
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 ■■■■■ Engineer & Architect group 建築企画
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■住宅性能表示の評価基準(2)火災時の安全−その5■


先週は共同住宅に限られた事項でしたが、今回は戸建ても、共同住宅にも関係がある
延焼の話です。

【貰い火は、もらい損】

自分の所からの出火には充分気を付けていても、隣家からのもらい火で財産をなくす
ことが有ります。

もうご存じと思いますが、民法709条で「故意又は過失で他人の権利を侵害したも
のは、生じた損害に対して賠償する責任がある。」としてますが、後に「失火の場合
はこれを適用せず」と続いています。これが有名な「失火無責任法」ですね。

この法律の背景には、「木造家屋が多い日本では火事になると大火になりやすく、そ
の損害を個人に求めるのは酷である。」としたのです。
いずれにしても、貰い物は嬉しいものですが、「貰い火だけは、貰い損」と言うこと
になります。
ですから、火を出さないように注意を払うと同時に、火を貰わないことにも注意が必
要となります。誰も好きこのんで貰うわけではありませんが、建物の構造上貰いやす
いものもありますので見てみましょう。

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【延焼の恐れのある部分】

消防法や建築基準法では、もらい火の危険な範囲を、「延焼の恐れのある部分」と言
って隣地境界から1階で3m、2階以上で5mを指定しています。
1階よりも2階の方が危険ゾーンが広がっているのは、炎は下から上へ大きく広がる
からです。

                         田園都市では隣とも遠く離れ、
              |←敷地境界     建物が延焼の恐れ範囲に入る
      /\ │←5m →│  /\      ことはないでしょうが、都心
     /  \火火火火火火 /  \     では軒を並べて建っています。
    /    \火火火火火/    \    両隣から5mづつ囲ったら、建
    │    │ 火火火火     |    物が全部延焼の恐れの範囲に
    ├────┤  火火火火────┤    入ってしまった。と言うこと
    │    │   火火火    │    も珍しくも有りません。
   ─┴────┴────┴┴────┴────
           │←→│←敷地境界
            3m


【危険な開口部】

延焼は火の粉などの火種が飛んできて、それが原因で新たに火災が発生する場合と、
隣家の火熱を受け、外壁面などが燃焼温度になり火災になることが考えられます。

どちらの場合にも窓などの開口部が最も危険な部分となります。
隣家が火災になった場合、まず窓を閉めなければなりません。雨戸が有れば雨戸を閉
め、火の粉が入るのを防ぎます。
次に窓際の燃えやすい物を取り外すことです。カーテン、障子などですね。
火災時に出来ることはここまでです。後は消防士の消火活動を見守るしか有りません。

でも、火災以前にすることは色々あります。
建物を延焼に強い仕様にしておくことです。

1.開口部を防火戸にしておく。・・・アルミサッシやスチールドアにしておく。

 「なぁんだ、普通の建具でいいのか。」と思われるでしょうね。そうです、今では
 当たり前田のアルミサッシでいいのです。(一寸古すぎるギャグかな?)

 でも、アルミサッシだけではだめなんですよ。ガラスが問題です。熱にあぶられた
 ガラスはすぐに割れ、割れると熱がいっぺんに住戸内に入り可燃物が燃えだしてし
 まいます。
 ポイントはガラスを網入りガラスにする事です。網入りガラスにすることで初めて
 防火戸となります。
 普通ガラスは3mmから5mmですが、網入りガラスは 6.8mmの厚みでガラスの中に格
  子状の鉄線が入った物です。
 このガラスは防火上も、防犯上も有効ですので、最初から網入りガラスにされるこ
 とをおすすめします。


2.開口部を延焼線から外す。

 『住宅のアルミサッシは頂けないな。家はウッディーに憧れているから窓枠も木製
 にしたい。』と言う方は結構いらいしゃいます。
 その場合は、延焼の恐れのない部分すなわち、隣地から3m、5m以上離れた部分で
 使うことです。

 ※住宅性能表示基準では開口部の位置と、大きさを判定の大きな要素として取り扱
  っています。大きな開口も防火面からすると不利に働くのですね。


3.雨戸の効用

 台風国の日本では雨戸は必需品でしたが、最近の住宅は西洋風住宅の影響でしょう
 か、雨戸のない家が多くなってきました。
 雨戸は台風時に避雷物から窓ガラスを守るほか、火災時や防犯にも有効ですから考
 えられてはいかがですか。
 雨戸は、閉めて廻るのも結構重労働ですね。そんなときは住宅用電動シャッターも
 あります。

 
4.軒裏、外壁を防火構造とする。

 簡単に説明しますと防火構造とは、不燃物で有る程度の厚みを持った材料で造られ
 たものです。防火認定試験に合格した製品やモルタル塗りなどがこれに当たります。
 木造であっても表面仕上げ材を防火性能のある物で造れば防火構造になります。


☆★防火構造を法律で義務づけられている地域もあります。皆様のお住まいの地域は、
  防火地域、準防火地域?
  場合によっては防火構造以上に防火性能の高いものを要求しています。


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【義務づけられた防火、耐火性能】

もし、あなたが密集地域や共同住宅にお住まいでしたら、もっと上級の性能を持った
構造が義務づけられています。(建築基準法)

あなたのお家は、下の表のどの欄に当てはまりますか?当てはめてみて下さい。

★建物の防火に対する構造は次の2つの要素で決まります。

・建物用途(表−1)・・・共同住宅であれば、階数と規模で決まり、戸建て住宅は
             関係なし。
・防火指定(表−2)・・・防火指定が何かで決まり、建物の用途は一切関係なし。


◆(表−1)住宅形態(用途)によって構造が決まる。
 (平方mが?で見える方が有るかも知れません。?は平方メートルの事です。)
┌────────┬──────────┬────────┬────────┐
│建物形態(用途)│階数        │ 防火指定   │ 建物構造   │
├────────┼──────────┼────────┼────────┤
│共同住宅    │4階以上      │ −−     │耐火構造    │
│        ├──────────┼────────┼────────┤
│        │3階        │防火・準防火地域│耐火構造    │
│        ├──────────┼────────┼────────┤
│        │3階        │防火指定無し  │準耐火構造   │
│        ├──────────┼────────┼────────┤
│        │2階部分500u以上│        │耐火構造    │
└────────┴──────────┴────────┴────────┘

◆(表−2)防火指定地域で構造が決まる。
┌────────┬──────────┬────────┬────────┐
│建物形態(用途)│ 階数       │ 防火指定   │ 建物構造   │
├────────┼──────────┼────────┼────────┤
│        │ 3階以上     │防火地域    │耐火構造    │
│        ├──────────┼────────┼────────┤
│用途に関係なし │ 延べ100u超  │防火地域    │耐火構造    │
│        ├──────────┼────────┼────────┤
│        │ 4階以上     │準防火地域   │耐火構造    │
│        ├──────────┼────────┼────────┤
│        │ 1500〜500u│準防火地域   │準耐火構造   │
│        ├──────────┼────────┼────────┤
│        │ 3階建て     │準防火地域   │防火構造    │
│        ├──────────┼────────┼────────┤
│        │          │防火指定無し   │構造規定無し  │
└────────┴──────────┴────────┴────────┘

※どうですか?
 当てはまる欄が見つかりました? ほとんどの方は、一番最後の防火してい無し、
 構造規定無しに該当したのではないでしょうか?
 防火指定無しの地域でも、決して隣家が火災にならないと保証したものでは有りま
 せん。
 

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★用語の説明コーナー★
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耐火構造・・・鉄筋コンクリート造、コンクリートブロック造等。
       その他 壁、柱、床、梁、屋根がそれぞれ耐火性能のある物。

       鉄骨造で外壁がALC板やコンクリート板のものは、外壁材は耐火構
       造材ですが、それを支える物が耐火性能がないため準耐火構造にラン
       クが落ちてしまいます。
       この鉄骨を先週説明しました耐火被覆をすれば、立派な耐火構造です。


防火指定・・・都市計画法で指定されています。市や区に聞けば分かります。
       おおむね防火地域は商業地域、準防火地域は近隣商業地域などです。
       お住まいの用途地域と合わせて、一度聞いて置かれると良いと思いま
       す。


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★編集あとがき★
先日、大阪を代表する法善寺横町の商店が、隣接する「旧中座」の解体工事で、管の
中のガス抜き中に突然爆発があり、延焼で焼け落ちてしまいました。
独特の雰囲気を持った古い通りなので、大阪の人々に惜しまれています。
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『建築雑知識』は建築技術者と建築家のグループ
「Engineer&Architect group建築企画」
  が「建築を愛する皆様」へお送りします。
                       編集発行:E&A建築企画 事務局
                         E-mail:jim@kentiku-kikaku.com
                         http://www.kentiku-kikaku.com/


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