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建築知識
 
018号



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  ◆◇◆                          ☆建築雑知識            018号
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◆住宅性能表示の評価基準(3)劣化の軽減−その6◆


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鉄筋コンクリート造の劣化はまだまだ書くことが多く残っていますが、住宅性能表示基準
シリーズとしては一旦終わりにします。今週は鉄骨造に移ります。

◇【鉄骨造の劣化】

住宅と言えば、戸建ては木造、分譲マンションは鉄筋コンクリートが一般的な構造体と考
えられますが、もう1つ代表的な構造体が鉄骨造です。
最近は鉄骨系プレハブ住宅の出現で広く認知されてますが、住宅に鉄骨が使われるように
なったのは、木造やコンクリートに比べ比較的新しい事です。

鉄骨劣化はもちろん錆びることです。錆びる事とは空気中の酸素と結びつき酸化鉄に変化
することで、鉄で有る以上避けられないことです。
金属の中でも錆びにくいものと錆びやすいものが有ります。

【雑知識】ついでに、久しぶりに中学か高校時代の化学の授業に戻って見ましょう。
下の記号は金属のイオン化傾向を示しています。声に出して暗唱させられましたね。


 K  Ca  Na   Mg   Al    Zn  Fe  Ni   Sn    Pb      H   Cu  Hg  Ag  Pt Au

「カ、カ、ナ、マグ、アル、ゼン、鉄、ニ、セン、ピ−ビー、は、銅、水(銀)の、白(金)」



左側ほどイオン化傾向は大きく錆びやすい。右に行くほどイオン化傾向は小さく錆びにく
い性質を持っています。一番右のAu(金)は最も錆びにくい金属です。
こうして表を見ると、Au(金)やPt(白金)、Ag(銀)などの貴金属は綺麗なだけでなく、元々
錆びにくい性質を持っているのですね。だから価値があるのでしょう。

鉄は表の左側に有り、錆びやすい金属に分類されます。

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◆<錆びやすい鉄>

鉄は固く丈夫で古代から利用されてきました。その多くは武器だ有ったり、農耕具でした。
放っておくと直ぐに錆びるため、手入れは欠かせないものです。要は固く丈夫だけど手の
掛かる代物だったため建物への利用は遅れました。

鉄が建物に利用されるようになったのは、1851年に開催された【第1回万国博覧会】に鉄
とガラスを組み合わせた新しい建築物として建設された【クリスタル・パレス(水晶宮)】
が最初でしょう。
この水晶宮は6ヶ月の会期の後、解体されて別の場所に形を変えて移築されました。この
移築は鉄の持つ建築物としてのポテンシャルの高さを見せつけたと言えます。
http://inpaku.kajima.co.jp/jik/year/year_3.html 

その後、同じく1900年開催のパリ万博でエッフェル塔が建設され、建築物の高層化への道
を暗示しました。
ニューヨークの古い摩天楼(超高層ビル)は1920年〜1940年の間に次々と建設され、パリ
のエッフェル塔と同様今日に至っています。

「手の掛かる」と思われていた鉄が、100年 もの長きに渡る構築物になり得たのもひとえ
に防錆技術の向上によるものです。塗装することで、鉄の分子が酸素の分子と化合するの
を防ぐ技術が発達したのです。


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◆<鉄の寿命>

鉄骨造の寿命は錆びると縮まりますが、どのような状態を寿命と考えるのでしょう。
性能評価では鉄骨の断面積の10%が欠損した(錆びた)状態を寿命と考えています。
もちろん断面積が10%欠損するまでの期間は、材料の耐久性、環境条件、施工条件、維持
管理条件など種々の要因に左右されます。
ですから築何年で寿命という表現は難しく、逆に条件さえ良ければ築年数に関係なく寿命
はこないとも言えます。

鉄は一旦錆びると元の鉄に戻すことは出来ませんから、9%欠損まで何もしなくて良いと
言う問題ではないですね。錆びないようにすることが重要になってきます。

錆びないようにするには、ペンキを塗る。これは常識であり、定説です。しかし、ペンキ
が塗れるところはメンテナンスが出来ますが、工場などは別にして住宅の多くの場合は鉄
骨の構造材は内装材で囲われています。囲われているために簡単にはメンテナンスは出来
ません。
ですから住宅等の鉄骨の寿命は、錆止めに掛かっていると言ってもいいですね。


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◆<錆止め>

錆止めには、塗装とメッキがあります。いずれも日本工業規格(JIS)に基づき使用箇所や
条件によって厳しく規定されていますから安心していいでしょう。
問題は運搬と建て方にあります。折角防錆処理をしても運搬や建て方で吊り下げる時傷を
付けたなら、他が完璧でもそこから腐食は始まります。

現場監督は吊り下げフックを用意するなどの注意や、建て方後の点検を充分にして下さい。

錆の直接の条件は湿気ですから、湿気の多い柱の足元や、コンクリートの根巻きされる部
分は特に手厚い措置が必要となります。
その他条件の悪い所は床下、天井裏など木造の場合と共通します。


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★用語の説明コーナー★    
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重量鉄骨と軽量鉄骨・・・鉄骨造には大きく2つに分けられます。
            一般的に鉄骨造とは重量鉄骨造を言いますが、1〜2階建ての
            小規模建築に限り使われる軽量形鋼を使ったものを軽量鉄骨造
            と言います。鉄骨系プレハブ住宅はこれに当たります。


     重量鉄骨・・・H形鋼、ボックス鋼、溝型鋼、などビル建設で見られるもの。
            Hの縦をフランジ、横をウェブと言いフランジの方が厚い。
            厚みも7〜10数ミリをよく使う。厚いもので数センチの物もある。 

     軽量形鋼・・・軽溝形鋼、リップ溝型鋼、軽Z形鋼など厚みが2.3〜3.2mm程度
            で重量が軽く扱いやすいが、高層には向かない。


       ┌ウェブ           ┌フランジ 
     ┃ │  ┃          ┏┷         ┌┐
     ┣━┷━━┫          ┃          │
     ┃    ┠──┐       ┠──ウェブ     └┘
             フランジ    ┗┯
                      └フランジ 
                               <リップ溝型鋼>
                               <C型チャンネル> 
      <H形鋼>          <溝形鋼>     <Cチャン>とも言う


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★編集あとがき★
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ジングル・ベルのメロディーが流れ、テレビではこれからの宴会を当て込んで胃腸薬の
コマーシャルが盛んに流されます。まだ11月と言うのに、否応なしに早師走の気分にさ
せられて焦っています。
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  が「建築を愛する皆様」へお送りします。
                       編集発行:E&A建築企画 事務局
                         E-mail:jim@kentiku-kikaku.com
                         http://www.kentiku-kikaku.com/


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