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◆◇◆ ☆建築雑知識 017号
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◆住宅性能表示の評価基準(3)劣化の軽減−その5◆
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◇【コンクリートの劣化】その3
◆<トンネル内コンクリート崩落事故>
数年前、山陽新幹線のトンネル内でコンクリートの固まりが落下するという事故が続きまし
た。この時、コンクリートの砂利の成分がアルカリ骨材反応を起こしたと言うことで問題に
なりました。
アルカリ骨材反応とは、コンクリートに使われている骨材(採石)がセメントのアルカリ成
分と反応して水ガラスを造ることに原因があります。
ガラスが出きると体積が膨張し、コンクリートを押し広げるために無数の亀甲状のひび割れ
を生じさせるのです。
コンクリートのひび割れが一定方向に決まっているようですと、地震の揺れや不動沈下など
の構造的なものが考えられますが、方向性が定まっていない亀甲状の物や梁や柱に見られる
ように、中間に長手方向に真っ直ぐ入るクラックもアルカリ骨材反応が疑われます。
│││ ┌クラック │ │ │ │
───┘│└──┼─────┘ └─────────┘ └──
│ ─┴─────
───┐│┌───┬────┐ ┌─────────┐ ┌───
│││ 梁 │ │ │ │
│││ │ ├─柱 ЖЖЖ │ │
│├┼─クラック │ │ ЖЖЖ │ │
│ │ │ │ ЖЖЖ │ │
\亀甲クラック
◆<アルカリ骨材反応>
コンクリートの砂利は川砂利が使用されてきましたが、高度成長に追いつかず山砂利(採石)
が使用されるようになりました。ところが、或る地方の採石を使用したコンクリートに無数
のひび割れが生じたため調査・研究をすると、ある種の採石ではアルカリ骨材反応を起こす
ことが分かってきました。今では次のことが分かってきました。
(1)アルカリ・シリカ反応
(2)アルカリ・炭酸塩反応
(3)アルカリ・シリケート反応
*(2),(3)は地域もごく限られてたり被害も軽微なことから、アルカリ骨材反応問題はアル
カリ・シリカ反応と言えます。
それにしても、鉄筋をガードしているコンクリートのアルカリ成分がひび割れの原因になる
とは皮肉なものですね。
◆<シリカ質鉱物−アルカリ反応骨材>
・シリカ質鉱物(石英、クリストパライト、トリジマイト、オパール)
・ガラス (火山ガラス)
・シリケート鉱物(雲母、粘度鉱物)・・・・・
鉱物名を表示したところで、我々としてはどうしようにもないですね。
そこで、通産省(現経済産業省)はコンクリートを生産している大元の生コンプラント業者
に対して、骨材成分規制をしています。
これで一応安心。・・・かな?
でもすでにアルカリ反応骨材を使用された建物はどうなるのでしょう。
すでに反応しひび割れを起こした建物は、今さら成分を変えるわけには行かないですね。
かと言って亀甲状のひび割れのまま放置しているのも見苦しいし、放置することで新たな
問題が発生します。
ひび割れした状態では未だ鉄筋の錆までには至ってませんが、放置する事でひびから進入し
た雨水や炭酸ガスなどで鉄筋の錆につながります。鉄筋が錆びてしまうとひび割れなどでは
済まなく、コンクリートの崩落となってします。至急外装補修する必要があります。
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◆<塩害>
アルカリ骨材反応と並び劣化の要因となるものに「塩害」が有ります。これはコンクリート
の中に混入した塩が鉄筋を錆びさせるもので、アルカリ骨材反応よりも直接的です。
ではコンクリートの中にどうして塩が入るのでしょうか。
(1)生コンの生産時にはいるケース
(2)建設後に入るケース
(1)生コンの生産時に入るケース
コンクリート成分に砂があります。砂利と同様に以前は川砂が使用されてきましたが、これ
も川砂の枯渇により海砂が使用されてきました。
海の中の塩分が鉄筋を錆びさせるのは当初から分かっていたため、海砂を使用するときは充
分な水洗いが要求されたのですが、基準が曖昧だったのか業者がいい加減だったのか知りま
せんが被害が出てしまいました。
現在は生コン業者が材料を管理する事を義務づけていますので、塩の混入は避けられると考
えますが、冒頭で述べたように「性悪説」からすると自己管理だけでなく、チェック体制を
しっかり造ることが重要です。
(2)建設後に入るケース
寒冷地では道路凍結予防に塩化カルシウムが撒かれますが、この塩化カルシウムが空気中に
飛散し、それが建物に着いてしまうのです。
これは中性化と同じように、コンクリートを被覆しガードする事で防げます。
◆<塩害対策>
原因や予防は分かりましたが、コンクリートの中に塩分が有ると分かったら放置は出来ませ
ん。どうしましょう。
料理でもうっかり塩を入れすぎたら大変ですね。でも、料理だったらお湯を足して薄めるこ
とも出来るでしょうが、コンクリートの中の塩はそうはいきません。
また、塩は中性化の問題のように他の物質と化学反応させて元に戻すことも出来ません。
この場合電気的な処理をして、塩分(塩イオン)を表面に吸着して取り除く方法が開発され
ています。
しかし、これは土木のような単純形でコンクリートがむき出しのものは対処が楽でしょうが、
建築のように複雑形でコンクリートの廻りを内装材で覆ったものは対処がしにくいですね。
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《対処療法でなく予防》
病気でも一旦掛かってしまうと大変ですね。建物でも一旦塩分が入ってしまうと大変なこと
になります。
今日本にはコンクリート診断士の制度がありますが、これはコンクリートの病を診断する医
師に当たるのでしょうか。医師も重要な役目ですが、病気になる前に手を打つことの方が重
要ではないでしょうか。
アメリカでは民間のコンクリート打設専門の検査官がおり、コンクリートに関わる問題を未
然に予防するシステムを作っています。
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★用語の説明コーナー★
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クラックスケール・・・クラックの巾を計測する物差し。
クラックの巾が0.2mm以下はヘアークラックと言い、構造クラック
とは区別している。
ヘアークラックはコンクリートが硬化するときに起こるクラックで、
構造耐力上は問題ないとされている。
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★編集あとがき★
コンクリートは鉄筋コンクリート造に限らず、木造や鉄骨造にも最も重要な基礎部分に使用
されています。コンクリートは利点も多い反面欠点も多くものです。コンクリートだけで数
冊の本が書けそうです。
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『建築雑知識』は建築技術者と建築家のグループ
「Engineer&Architect group建築企画」
が「建築を愛する皆様」へお送りします。
編集発行:E&A建築企画 事務局
E-mail:jim@kentiku-kikaku.com
http://www.kentiku-kikaku.com/
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