Engineer Group
メールマガジン
建築知識
 
022号



   ◆
  ◆◇◆                          ☆建築雑知識            022号
 ◆◆◆◆◆
◆■ ■ ■◆           
 ■ ■ ■
 ■■■■■ Engineer & Architect group 建築企画
*******************************************************************************
◆住宅性能表示の評価基準の(5)温熱環境−その1◆

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
●私たちの住宅に対する思いは、人それぞれに違って来ると思います。
 しかし、太古の昔から家の中が暖かくありたいと思う気持ちは、雨露をしのぐのと同じ
 く、家の持つ基本的な機能だったのではないでしょうか?

 「雨露をしのぐ」には屋根、庇などの覆いがあればよいのですが、太古も今も屋根に於
 いては差ほど進歩しているとは思えません。
 茅葺き屋根も地方に行けば今でも存在しますし、最近でこそカラーベストに取って代わ
 られていますが、瓦屋根も今でも多く使われています。

 それに引き替え、「暖かくありたい」との機能はどうでしょう?
 随分変わったと思いませんか。まず、暖房器具が発達しました。囲炉裏、炭火、練炭火
 鉢、石油ストーブ、電気ストーブ、そして今では「暖かさ」だけでなく「涼しさ」も兼
 ね備えたエアコンです。

 家も、昔の人が風を防ぐだけの、戸や障子でできた家に住んでいたことを考えると、格
 段な進歩です。
 壁そのものに断熱性を要求し始めたし、窓も2重サッシやペアガラスを要求する時代に
 なりました。

 日本の家屋は、『夏に対処するを良しとする。』とし、風通しの良さを基本としたもの
 ですが、昨今の住宅は夏でもエアコンに頼るようになり、暖房も冷房も熱負荷の少ない
 密封型の住宅になってきて居ます。いわゆる「高断熱高気密住宅」の出現ですね。

●この高断熱高気密住宅は、住む側の要求からだけではありません。
 いま、地球規模での温暖化の危機が叫ばれています。
 温暖化の原因は二酸化炭素の排出量が増えていることが原因ですが、二酸化炭素が増え
 ると、大気の赤外線吸収能力が高まり温暖化になるのは既にご存じですね。

 そこで、1997年12月に京都で開かれた「気候変動枠組み条約第3回締結国会議(COP3)」
 において、各国の二酸化炭素の削減目標が示されました。
 この目標は国際的な約束ですから、政府が先頭になり目標達成のために色々な施策を出
 しています。たとえば、住宅融資に深い係わりを持つ住宅金融公庫の建設基準にも取り
 上げ、省エネ化を進めています。

 二酸化炭素の排出削減は、すなわちエネルギー消費の削減の問題なのですね。
 それで、省エネ対策として「高断熱高気密住宅」が進められてきているのです。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
┌────────┐
│※ 省エネ住宅 ※│
└────────┘ 

●断熱材・・・どんな材料でも、覆うだけで暖かくなります。私たちが服を身につける
       のは、保温が1番の目的ですよね。中には伊達の薄着のようなファッシ
       ョン重視の人も居ますが、夏は薄着、冬は厚着、これが一般の常識です。

       布のようなものでも、またどんな材料でも、何らかの断熱性能を持って
       います。
       エスキモーの氷の家や、東北地方の鎌倉遊びなど経験しないとなかなか
       判りませんが、あんな冷たい氷や雪でも立派な家になるのです。
     
       ただ、材料により断熱性能は、大きく違ってきます。性能が低いものは、
       重ね着をして暖かくしますが、あんまり厚着するとモコモコして動き辛
       いですよね。

       建物の場合でも断熱性能が低い材料は、大きな厚みが必要となります。
       でも、限られた敷地で、壁の厚さが数十センチもあったら大変です。
       だから値段は高くても、薄くて断熱性能の高い材料を使うのです。

       『段ボールハウス』、聞かれたことがありますか?
       そうです、気の毒ですが、あのホームレスの人々が公園などで、段ボー
       ルの箱を上手に組み合わせて四角い箱(ハウス)を造ってますね。あれ
       です。あれって、結構暖かいんですよ。
       (もっとも住んだことはないですが。)

       あんな紙が暖かいはずがないとお思いでしょうが、材料は紙でも構造が
       特殊です。段ボールは3枚の紙と2層の空気層でできています。
       あの空気層で結構断熱性能があるんです。対流(空気の流れ)ができる
       ほどの空気層では保温、断熱は期待できませんが、適当な厚みの空気層
       は結構断熱性能があるんですよ。

       衣類でも同じですが、厚手のものを1枚着るより薄手でも何枚も重ねて
       着た方が、ずうっと暖かいのと同じですね。

       断熱を考えるとき、断熱性能の良いものをふんだんに使うだけでなく、
       工夫して使うことも必要ですね。


《断熱材》  グラスウール、ロックウール、ポリスチレンフォーム、ポリエチレンフ
       ォーム、セルローズファイバー、フェノールフォーム、ウレタンフォー
       ム、etc

      (上記の材料は、一般的に言って後の方が断熱性の良い材料ですが、同じ
       材料でも、製法、等級により断熱性能は違ってきます。
       グラスウールでも等級の高いものは、ポリエチレンフォームの性能の低
       いものよりも優れています。
       材料には断熱性の他に色々な特性があります。材料の選択は、材料の特
       性を熟知して使用する事が大事ですね。)


●熱隙間・・・せっかく断熱性能の良いものを使っても、隙間があっては何にもなりま
       せん。隙間から熱がどんどん放出してしまいます。
       「ザル」で水を汲み出しているようなものでしょうか。

       この隙間は、材料と材料の隙間だけでなく、断熱性能が極端に悪い部分
       も、断熱の観点から見ると隙間になります。
       例えば、ガラス窓です。
       壁に断熱材をしっかり入れても、ガラス窓のガラスの部分は断熱性能は
       よくありません。極端に言えば、壁に穴が開いているようなものです。
       しかし、明かりを採り入れるためには、ガラスの使用も仕方がないです
       ね。でも、ガラスでも断熱性能を上げることは、出来ます。
       先ほ述べきました「空気層」の応用です。ガラスとガラスの間に空気層
       を設けたペアガラスですと、断熱性能は非常に優れています。
       ペアガラスの使用で、冬に悩ます窓の結露からも開放されます。

●結 露・・・窓の結露はガラスだけではありませんね。窓のアルミ枠にも、結露がビ
       ッシリ着きます。特にアルミのような金属窓枠は熱を通しやすく、結露
       が着きやすいのです。

       ガラスのコップと発泡スチロールのコップに、氷水を入れるとどうなる
       でしょう?
       ご存じの通り、ガラスのコップにだけ結露が着きますね。
       これは、ガラスの方が熱を通しやすく、ガラス表面の温度が低くなった
       ためです。
       空気中の水分は、空気の温度が高ければ高いほど、多くの水分が溶け込
       みます。低くなると溶け込む量が少なくなり、溶けきらない余分な水分
       が水に還ってしまいます。
       コップの廻りの湿った空気がコップに触れたとたん、急激に冷やされ、
       余分な水分がコップの表面に水滴となって着いたんですね。

       このように結露を防ぐには、暖かい室内の空気を冷たい物に触れさせな
       い事が必要になります。
       これらの空気が壁の中で触れ合ったとしたら、どうなると思います?
       これが恐ろしい◆内部結露◆となってしまうのです。
  
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
┌────────────────────┐
│※ 高断熱高気密の落とし穴に、ご注意! │
└────────────────────┘

 世の中全体が、省エネのために「高断熱高気密住宅」に向かっていますが、これには落
 とし穴がありますので、皆さん注意を要します。 

 高断熱高気密は、ただ断熱材を厚くすればよいと言った安易な工事をされると大変大き
 な欠陥を生みます。

 内部結露が原因で、土台をはじめ内部の木造が腐ってしまった事故が起こりました。
 早くから「高断熱高気密住宅」が進められた北海道で起きた実際の話です。
 わずか10年足らずで建て替えなければならなかった人のことを思うと気の毒でなりま
 せん。

 では、内部結露がどうしてできたか? この続きは次回に紹介します。

********************************************************************************
★用語の説明コーナー★   
**********************
ペアガラス・・・2枚のガラスの間に空気層を設けたガラス。

        1枚の厚いガラスや、2枚貼り合わせたガラスより、間に空気層が有っ
        た方が、断熱に大きな働きをします。
        更に断熱性能を高めたペアガラスもあります。外部側のガラスに反射ガ
        ラスを使用したものです。

        ペアガラスを使用すると熱の損失が少なくなり結露も防げますが、建具
        は断熱サッシにしたいですね。そうしないと、ガラス面には結露が出来
        なくてもサッシ枠が結露でベタベタになってしまいます。
********************************************************************************
★編集あとがき★
 今年の正月は、暦の関係で比較的長くお休みのところが多いようです。私共も6日から
 業務を始動しますが、今はホームページの見直し作業で追われています。
 ホームページが改訂しましたら、ご連絡しますので一度ご覧になって下さい。
*******************************************************************************
『建築雑知識』は建築技術者と建築家のグループ
「Engineer&Architect group建築企画」
  が「建築を愛する皆様」へお送りします。
                       編集発行:E&A建築企画 事務局
                         E-mail:jim@kentiku-kikaku.com
                         http://www.kentiku-kikaku.com/


前へ 次へ