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建築知識
 
025号



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  ◆◇◆                          ☆建築雑知識            025号
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 ■■■■■ Engineer & Architect group 建築企画
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■住宅性能表示の評価基準(5)温熱環境−その4

【断熱対策】 

建物は太陽光という強いエネルギーで熱せられます。冬の間は有り難いですが、夏は厄
介者ですね。ただ暑いだけでなく、このエネルギーは建物にとんでもないことをもたら
します。
物は熱せられると膨張します。これは建物でも同じ事です。

☆小規模の建物ではあまり影響はありませんが、一辺が数十メートルもする建物では膨
 張する量は無視できません。全体が膨張するのでなく、熱量を多く受けた部分だけが
 伸びるので、建物に大きな歪みを作ります。
 
 四角の箱を連想して下さい。上の面(屋根)が強く熱せられると、屋根面は膨張しま
 す。その時屋根面にくっついた側面(壁)の上部は、屋根の膨張とともに引っ張られ
 て行きす。
 少しづつの伸びですが、建物が数十メートルも有ると両端での量は、積み重なって大
 きな伸びとなります。壁の下の方は熱せられないので元のままです。

 餅のようにどんどん伸びる建物でしたら問題は起きませんが、コンクリートの建物で
 すとコンクリートが引っ張る力に負けてクラックが生じます。鉄骨造でALC版の壁
 ですと、目地が切れてしまいます。

 
       太陽エネルギー 

     ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
      屋根面が暖められる。
      ┌───────┐
      │       │
      │       │
     ─┴───────┴──
          │
          ↓
                

       太陽エネルギー
 
     ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
        
    ←┌────⇔────┐→上面が膨張
      \ ξ     ξ /
       \└クラック /     極端な断面図ですが上面が伸びるにつれて
     ──┴─────┴──   コンクリートが引っ張られてクラックが
       底面は元のまま     入る。


☆断熱と言うと暖冷房の熱効率を高めるために施すものと考えがちですが、断熱には建
 物を守る意味もあるのです。
 この場合の断熱材は建物の外に設けます。いわゆる外断熱ですね。外断熱は建物を丸
 ごと断熱材で包みます。
 効率の面から考えても外断熱は優れています。一度暖まったものは蓄熱されてなかな
 か冷めません。内断熱の小屋裏は少々の換気口では熱がどんどん貯まり、外気の温度
 よりも数十度も高くなってしまいます。外気温より高くなった物を断熱するより、高
 くなる前にシャットアウトするのが効率的です。
  

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【屋上緑化で断熱】

☆バウビオロギー住宅も、外断熱といって良いと思います。
 バウビオロギー住宅は、「人間と自然に適合した理性ある建築」の理念の元に、自然
 の恵みを生かした住宅です。
 屋根一面に植えられた草花は、建物を熱から守るだけでなく、屋上庭園と同様に都心
 のヒートアイランド現象を和らげる働きをします。

 屋上を緑化すると言うと屋上庭園を連想しますが、屋上庭園は60cm以上の土の厚
 みが必要で、荷重負荷、廃水処理、防水に対する根対策、樹木の手入れなど結構手が
 掛かるものです。
 そこで、屋上庭園よりも手軽で建物への構造的負担も少ないセダムマットを利用した
 セダム類の緑化が注目されています。

 セダムとは耐乾性、耐寒性に優れ、どんな悪条件でも育つ多肉植物です。世界各地に
 300種以上有るというセダムは、ローメンテナンスという手軽さからと可愛らしさ
 から、サボテンと同じように鉢植えにして楽しむ愛好家もおられます。
 まずは、こちらをご覧下さい。 http://obubu.cool.ne.jp/babe/taniku-sedum.html

 どうです。可愛らしいでしょう。
 セダムマットはこれらのセダムを、芝生のマットのように密集させたものです。マッ
 トは約300mmx600mmの大きさで、床に当たるセダムベース、防根シート、排水マット
 の上に薄く培土を撒き、その上に育成させたものです。
 芝生は芝床を整備し、丹誠込めて手入れしないと育ちませんが、セダムマットを使え
 ばただ敷き並べるだけの手軽なものです。
 厚みも少なく、排水層も一体となったマットですから屋根のような勾配のあるところ
 にも使え、これからの建物緑化の主流になると期待されています。
 http://www.meltorch.com/product/shohin/sedamu.html

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【エネルギーを逃がす】

エネルギーは閉じこめていると、どんどん蓄積され温度は高くなってしまいます。
炎天下に駐車していた車に乗り込むとき、中の温度の高さに皆さんビックリされた事が
あるでしょう。閉じこめられた空間は恐ろしく熱が貯まります。この時窓を全開にして
熱を逃がしてから乗り込みますよね。
家でも同じです。風の通りの良い家と、悪い家とでは清涼感は随分と違う物です。
また、空気の流れがないと身体の廻りにも体温の熱がこもって暑く感じます。これを吹
き飛ばすのが団扇であり、扇風機の役目ですね。

車の中の温度と言えば、夏になると毎年のように起きる事故があります。
車の中に子供を寝かせたままパチンコに興じていて、子供を死なせる馬鹿母がいます。
走行中の車は風を受けて熱の放出がありますが、停止した車は熱の放出がありません。
たとえ冷房をかけた車と言え、ガラスから入ってくる熱量はどんどん車中に蓄積されて
しまいます。

性懲りも無しに今年の夏も起きるのでしょうか?

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【エネルギーを利用する】

この強烈なエネルギーを嫌うだけでは能なしですね。
そうです、太陽エネルギーはクリーンエネルギーである上に、タダのエネルギーが無尽
蔵に身近に有るのです。このエネルギーを有効に利用しない手はないですね。

太陽熱利用器具として屋根の上に乗っかっている太陽熱温水器や太陽熱蓄電池を良く目
にします。出始めの頃は随分高い気もし、メリットが有るのだろうかと思った物ですが、
最近では値段も随分下がり効率も向上してきたので検討して見ては如何ですか。

どうせ付けるなら、新築時に検討することをお奨めします。ソーラースクリーン等は屋
根代わりに設置することもできますので、二重投資せずに済みます。

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★編集あとがき★
 この記事は夏に書いたものなので、寒い冬には少し違和感が有る内容が有ります。
 今年はインフルエンザが大流行しそうだそうです。
 皆様も暖かくして、風を引かないようにして下さい。
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『建築雑知識』は建築技術者と建築家のグループ
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  が「建築を愛する皆様」へお送りします。
                       編集発行:E&A建築企画 事務局
                         E-mail:jim@kentiku-kikaku.com
                         http://www.kentiku-kikaku.com/


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