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建築知識
 
060号



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  ◆◇◆                          ☆建築雑知識            060号
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 ■■■■■ Engineer & Architect group 建築企画
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第60号の記事
  1.記事・・・祭りだ、ワッショイ!      
        
  2.用語の説明
  3.編集あとがき

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 前号はJR奈良駅舎や給首相官邸などの歴史的建築物の「曳き家」を扱いました。
 曳き家を前号で終わってしまうと、「曳き家って歴史的建築物を残すときに遣るん
 だ。」と誤解を与えかねないので、今回はそうでないケースを扱います。
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◆住宅の曳き家

 奈良駅舎や首相官邸のような歴史的建築物だから話題性が有りましたが、鉄骨鉄筋
 コンクリート(SRC)造の巨大建物を曳くのは希なことです。
 元々曳き家は住宅などの木造建築物の移設に広く用いられた手法で、昔はよく見ら
 れたそうです。でも、最近では曳き家は見られなくなりましたね。
 では、どうして昔は曳き家がよく見られたのでしょう?木造住宅の名建築が多かっ
 たのでしょうか?理由はいくつか考えられます。

 1.今の住宅は、古くなったら簡単に建て替えるケースが有りますが、昔は余程の
   事が無い限り百数十年持たすのが当たり前だった。

 2.戦後、都市計画で新しい道路ができたり拡張される事が多く、道路に掛かる住
   宅が多く発生した。

 3.区画整理事業が盛んになり、別の新しい土地が割与えられ、移設するケースが
   増えた。

 今でも、道路拡張で立ち退きを余儀なくされているケースは有ると思いますが、曳
 き家は見られません。それは、曳いて移設できるほど残った敷地に余裕が無いこと
 や、曳いていけるほどの近くに代替地が見つからないからでしょう。
 それに、道路を隔てた曳き家は交通事情が良くないとできないからです。
 さらに、曳き家も結構費用が掛かるため、「それなら、いっそ建て替えようか。」
 と言う事なんでしょうね。 

 戦前までは、生まれた土地から離れることが少なく、住宅も親から子へ、子から孫
 へと、代々伝え住んでいたものでした。住宅とは、そこの家族の歴史そのものだっ
 たと言えそうです。住宅への思い入れも大きかったものと思います。 

 しかし、戦後の復興とともに産業が発達し、都会への人口の流出が始まりました。
 核家族の始まりですね。
 都会でのアパートでの一人暮らしや寮住まい。結婚しても6畳一間新婚生活。・・・
 まるで「神田川」の世界ですね。

 やがて子供が産まれ、「せめて2間のアパートに引っ越そうよ。」と妻にせがまれ
 ての引っ越し。
 高度成長期に「そろそろ、我が家もマイホームが欲しい。」とマイホームプラン。
 今や住宅とは、人生とともに移り住むものになったのですね。
 ・・・これって、ヤドカリ」に似てない?
 そうです。現代の住宅事情は、ヤドカリなのです。生活状況に応じて移り住む現代
 の住宅観では、一軒の住宅に家族の歴史を残すことが無くなったのです。

 おとっと!変な方向に話が進みましたね。要は、曳き家をしてまで今の住宅を残そ
 うという愛着が少なくなったんでしょうね。

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◆どうやって曳くの?

 少なくなったと言っても、それは敷地の狭く、交通状況の悪い都会でのこと。
 地方では今でも曳き家は見られます。
 地方の住宅は、歴史や思い出がいっぱい詰まっているのでしょう。それと、建物自
 身が何十年も耐えられるほど丈夫なのかも知れませんね。

 コンクリートの奈良駅舎や旧首相官邸の曳き家は前号で伝えましたので、だいたい
 の様子は分かっていただけたと思います。
 では、木造住宅での曳き家はどうやって曳くのでしょう。
 考え方は同じです。木造はコンクリート造より軽いので大げさな機械は使いません。

 建物を持ち上げてコロの上に乗せて、コロの上をコロコロと引っ張ります。
 ただ、持ち上げるときに傾いたりすると、建物に亀裂が入りますので慎重に水平を
 保つ事が要求されます。

              1.祭りの御輿のように建物の下に持ち上げるための
     /\         鉄骨材(昔は木材)を通します。
    /  \        場合によっては床下だけでなく、床上にも鉄骨材
   =│==│=鉄骨材    串刺しにすることもあります。
    ├──┤
   ======鉄骨材  2.鉄骨材ごとジャッキで上げて土台との間に隙間を   
  ← 〇  〇        作り、コロを乗せます。
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  
              3.ワイヤーで引っ張ります。 

              4.新しい土台に降ろします。

 曳き家の様子を動画にしたホームページを見つけました。様子が良く分かりますよ。 

    http://www.kumano-kpr.co.jp/kpr/kprmovie.html

◎こちらのホームページは、「曳き家」を街のイベントとして、子供たちに曳かせた
 様子が持っています。これって、良いかも。祭りがワッショイ!

    http://www.news.imap.ne.jp/movie/021118kurohane/index6.html

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◆メリットのある曳き家

 曳き家は、それまで住んでいた建物をそのまま残せるだけでなく、生活しながら工
 事ができる事ですね。
 私のように引っ越しを繰り返している者には、大した道具も、資料も、お宝も有り
 ませんが、地方の家では一族の歴史が残されています。
 それを工事期間中引っ越すとなれば大変な労力となるでしょう。それが生活したま
 まできるとは、最大のメリットのように感じます。

 曳き家に付き物のジャッキアップ技術は、曳き家だけでなく他にも活躍しています。
 大都市の周辺部では、池を埋めたり、谷を埋めたりした急造の乱開発された住宅地
 が増え、地盤の不動沈下が目立っています。
 ジャッキアップは、こうして都会で活躍してたのですね。

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★用語の説明コーナー★   
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 SRC造・・・・(Steel Reinforced Concrete)の略。鉄骨鉄筋コンクリート構造。
         RC造は鉄筋コンクリート構造,S造は鉄骨構造。
         鉄骨の骨材を鉄筋コンクリートで固めた構造。
           
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★編集あとがき★
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 今年は梅雨によるシトシト雨でなく、台風による強い雨が多いですね。植えたばかり
 の稲に影響が出なければいいのですが。
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  が「建築を愛する皆様」へお送りします。
                       編集発行:E&A建築企画 事務局
                         E-mail:jim@kentiku-kikaku.com
                         http://www.kentiku-kikaku.com/


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