§ この改修工事は、ある賃貸マンションのオーナーさんの研修会で、「間違った改修工事」をテーマに講演した時、 たまたま研修に参加された〇〇さんが「我が家も講演での内容と全く同じ状態になっている。一度見て欲しい。」と相談された事から始まりました.   

講演内容参照                                      
改修工事の実録 (1)  「E&A」会員
1級建築士事務所
【現地調査】
現地に調査に伺いました。調査の結果は以下の通りです。

@問題のコンクリート崩落部分は、講演で述べた状況と全く同じように、弾性タイルを軒下部分にも吹いて鉄筋を錆びさせたものでした。

A屋根部分は勾配付きのコンクリート屋根ですが、防水は防水モルタルコテ押さえです。
防水モルタルはモルタルに防水剤を混入して練り合わせただけのもので、防水材にはほど遠いものです。

B崩落個所は幸いに勾配屋根であったため、水下の1番水が溜まりやすい部分だけに見られました。

※屋根の防水状況、コンクリート崩落の状況とも、講演内容と全く同じ例です。
外壁の吹き付け工事となると吹き付け業者さんに直接頼まれるケースが多く、このように建物の状況を考えずに施工され、 害を及ぼしているケースが全国的に見て相当な数に成るのではと心配です。

【調査建物外観】



【崩落個所と屋根形状】



【崩落状況】



【漏水個所断面】



【漏水個所状況】



【漏水状況】



【改修構想】
【ヒヤリング】
調査結果を報告するとともに、今後の対策のためにオーナーとのヒヤリングを行い、次のことを確認しました。

@この建物は棟続きに別棟を建て増しして以来、あまり使っていない。

A余り使わなくなったのは、中が非常に暑いのと、木造で縁側を継ぎ足したけど 雨漏りが酷いため。

Bこの建物を住み易く出来るので有れば、息子夫婦に住まわせたい。
【改修方針】
ヒヤリングの結果、「今現在、倉庫代わりにしか使用されていない建物を、住めるように快適な住宅とする。」を方針に検討に入りました。

@コンクリート崩落部分は、原因の1つである屋根部分の防水をしっかりした物にする。


Aコンクリートの崩落のもう1つの原因であるスラブ下吹き付け材は、その他の外壁がチョーキングを起こし劣化が始まっていたので、外壁吹き替えと同時に吹き替える。


B突き出し廊下の雨仕舞いは、調査の結果酷い施工がおこなわれているのが分かりました。   (写真参照)
   廊下部分の鉄板屋根を撤去し、新なに屋根で覆う。

C建物の中の暑さ対策・・・調査の結果、コンクリートスラブのみで全く断熱が施されていない上、天井の懐が狭く熱がこもりやすい構造となっていました。

上記@の防水を兼ねてコンクリート屋根の上に新たに屋根を作り覆い、屋根形状を変えデザインを一新する。
【改修検討】
「改修方針」に基づき技術的な面、予算の面から検討に入りました。ところが、方針を変更せざるを得ない事態になりました。理由は以下の通りです。

@既存建物の構造計算書をお借りしチェックしたところ、既存の2階屋根スラブは10cmと薄く計算上もあまりにも余裕が無く、 新たに屋根を築造した場合重量オーバーとなってしまい危険。

A新設大屋根の重量を屋根スラブで支えないで、梁、柱部分で支える構造ではコストが掛かりすぎる。
Bコンクリート崩落部分を見ると被り厚が少ないなど、既存建物の施工精度に信頼が置けない。
【改修方針変更】・・・検討の結果方針を変更する事にしました。

@屋根を架けるのをやめ、雨漏りがする縁側部分のみ屋根を架ける。
A問題の断熱は、屋根を設けるほど期待できないが断熱防水で対応する。

※改修の機会に外観イメージを一新しようと張り切っていましたが、人、建物の安全を考慮し断念する事にしました。
★☆★
世間で増改築やリフォームで問題になっているズサンな工事は、工事さえすれば「後のことなど知らない。」とした態度にあると思います。

「工事をやり易いように、儲けやすいように」が基準で工事をされたら、ズサンな工事は後を絶ちません。



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