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◆◇◆ ☆建築雑知識 033号
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■■■■■ Engineer & Architect group 建築企画
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■住宅性能表示の評価基準(9)高齢者等への配慮−その1■
「高齢者等への配慮」?・・・これはいわゆる「バリアーフリー」の事です。
今後益々高齢化社会が進み、これからの住宅は高齢化対策抜きには考えられな
いことです。
人生80年から90年が普通と言う時代に入ったわけですから、足腰が弱り始
めてからもまだまだ長く人生を送ることになります。
まだ若いから高齢化対策は先のことと思って居られる方も、今すぐにバリアー
フリーにしなくても、将来バリアーフリーが出来るような構造にしておくこと
は大切なことではないでしょうか。
それに、バリアーフリーは何もお年寄りだけの問題では有りません。評価項目
にも(高齢者等・・)のように<等>と言う言葉がついています。これは高齢者
だけでなく、身体が不自由な方を含め弱者への配慮です。
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【評価基準】
・高齢者等への評価は、対象を専用部分と共用部分とに分けて評価します。
・専用部分とは、戸建て、共同住宅に関わらず住戸玄関から内部を言います。
・共用部とは、共同住宅における建物エントランスから各住戸までの部分を
言います。
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【専用部分】・・・評価は「移動の安全性」、「介助の容易性」の観点から、
次の各項目毎に5段階評価をします。
・等級5・・・「移動」「介助」とも特に配慮した措置がされたもの
・等級4・・・「移動」「介助」とも配慮した措置がせれたもの
・等級3・・・「移動」「介助」とも基本的な措置がされたもの
・等級2・・・「移動」について基本的な措置がされたもの
・等級1・・・「移動」について建築基準法に定めた措置がされた物
ご覧のように、等級数字が大きいほど高齢者に配慮した建物となります。
具体的には次の項目で評価することになります。
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1)部屋の配置
寝室と他の部屋の位置関係で評価が変わります。
玄関、便所、浴室、洗面所、食事室が同じ階に有るかどうかを評価します。
等級5・・・全てが同じ階に有る。
等級4・・・便所、浴室が同じ階。
等級3・・・便所が同じ階。
・
・
なお、最近ぼつぼつ見られるようになったホームエレベーターが設置され
た場合は、等級3の内容であっても等級5の評価をします。
この評価項目は、お年寄り本人だけでなく介護する者にとっても垂直移動
は大変な苦労を伴うので、垂直移動を少なくしたものに高い評価を与えて
います。
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2)段差・・・床の段差
基本的には、段差は 5mm以下としてます。
但し、雨仕舞い、水仕舞い、扉の召し合わせなど 5mm以下にすると不都合
な部分については、手摺りなどを付けることを条件に、段差寸法に応じて
5段階の評価基準を設けています。
※お年寄りにとって、僅か10mmの段差でもつまづいてしまいます。だから
段差を設けないのが性能評価の基準となっています。でも、かと言って全
て真っ平らと言うのも如何なものでしょうか。
和室などは逆に床から40cmほど上げてはどうでしょう。つまり、和室全体
が大きなベッドのような、そんな作りの方がお年寄りには楽と思います。
本来和室は座ったり、寝そべったりする空間です。カマチの部分で腰掛け
てそのまま身体をスライドする。それが和室での自然な動きと思いますが、
皆様はどう思われますか。
◯ ヨッコラショ!
│\ 和室
洋室 ┌┘┏━━━━━
━━━━┷━┛
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3)階段
共同住宅ではメゾネット型式の住戸以外は、ほとんどの場合階段は有りま
せん。一方、戸建ての場合は平屋が理想でしょうが、土地の効率化の関係
から現実には平屋建ての住戸は少なく、最近では木造の3階建てが許可さ
れるようなり住宅の高層化に拍車が係っています。
しかし、階段はお年寄りにとって肉体的な負担を掛けるだけでなく、場合
によっては安全を脅かされる存在です。
そこで、基準は細かな寸法で評価段階を決めています。
例えば、等級5の場合
・勾配が 6/7以下、蹴上げ寸法の2倍と踏み面寸法を足した数字が550mm
以上650mm以下。
・蹴込みが30mm以下で、蹴込み板がついてる構造。
・廻り階段の禁止、最上段・最下階と廊下の寸法。
・蹴込み面と踏み面との角度を60〜90度以内。
・滑り止めをを付ける時は、踏み面と同じ高さにする。
・
・
などなど、細かく規定してあります。分かりづらいので図式化すると、
──┐ Hx2+W=550〜650mm
┌┘ W≧300mm
│ H/W≦1/7
│
└─────┐
┌┘
蹴─┤\蹴込みD=30mm(大きすぎると足の爪先が引っかかる)
込H│
面 └┬────┐
│ ┌┘
踏み面W│
│ <階段断面>
(*テキストメールでは表現が難しいですね。)
※階段は住戸の骨組みと関わる重要な部分なので、簡単に変更はできません。
将来を見越してゆとりのある階段を造っては如何ですか。
元々住宅の階段はスペース的に虐められてきた感が有ります。階段は、単
なる移動の手段でなく、日常の中でも変化に富んだ空間なので、階段を演
出することで随分と豊かな住空間になるのです。
最初から余裕の階段を造られる事をお勧めします。
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4)手摺り
基準では、手摺りの役目を1.姿勢変化や歩行の補助。2.転落防止。と
に分けて評価しています。
1.姿勢保持や歩行の補助
手摺りは高齢者にとって強い見方です。
基準では手摺りを付ける場所と、付けられた状態で5段階に分けられます。
等級5では、
階 段:両側設置 床からh=700~900mmの位置
便 所:立ち座りのためのものが設けられている。
浴 室:浴室出入り、浴槽出入り、浴槽内の立ち座り、洗い場の立ち座り。
玄 関:上がりかまち部の靴の脱着時のためのもの。
脱衣室:服の脱着時のもの。
※これら手摺りは、等級が高ければよいと言うものでなく、現在のライフ
スタイルと将来を見越した計画が重要と考えます。
元気な内は別に必要とするわけではないので、将来基準に合う手摺りが設
置できるよう廊下の巾を広めにするとか、手摺りがつく位置の壁下地に補
強材をあらかじめ入れておくなどで良いのではないでしょうか。
2.落下防止
落下防止が手摺りのもう1つの役目ですが、これは性能評価以前に建築基
準法でも定められた当然の規定です。
しかし、性能評価では基準法の規定以外に、手摺り子の間隔や、子供のよ
じ登り防止策を決めるなど決めの細かな基準に成っています。
※もともと、建築基準法は必要最低の基準ですから、手摺りのバーの高さ
は床から1.1m以上とした規定しか有りません。
皆さんも住宅雑誌などで手摺りと手摺りを支える支柱だけの、随分シンプ
ルな手摺りを「落ちそうだなぁ」と思いながらご覧になった事はありませ
んか。
高齢者対策や幼児対策ではそうは行かないですよね。
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この続きは次回にします。
5)通路、出入り口の巾
6)寝室、便所、浴室の広さ
【共用部分】 ・・・次回は基準の他に実際のバリアーフリーの
注意点も扱います。
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★用語の説明コーナー★
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・蹴込み・・・階段の踏み板は上の段の先端より若干ずらして下の段を取り
付けます。このずらした寸法を蹴込みと言い、これが大きい
とつま先が引っかかり、小さいと上りにくい階段になります。
・踏み面・・・階段の靴底が踏む部分。
・手摺り子・・手摺りと床の間に設ける落下防止の縦や横格子。住宅の場合
横の手摺り子は子供の足掛けになり危険。
・カマチ・・・框と書く。床板の先を止める角材。戸が有れば敷居となる。
玄関の上がり框などと言う。
廊下 框
━━━┳┓ 玄関
┗┻━━━━━━
・メゾネット・共同住宅での2階建て住戸型式。下の階に共用廊下と玄関が
有ると、上の階の共用廊下部分はバルコニーにする事が出来
るメリットがある。
BL┃ ┃廊下
┗╋━━━━━━╋┛
BL┃ 住戸2階 ┃バルコニー(BL)
┗╋━━━━━━╋┛
BL┃ 住戸1階 ┃廊下
┗╋━━━━━━╋┛
<メゾネット>
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★編集あとがき★
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3月末から4月始めは年末と同様、何かにつけて行事が多くなります。
学校の卒業、入学、入社、転勤、それに伴って送別会や歓迎会。
と言う訳で2週間ほどお休みさせていただきました。もうすぐ花水木も咲き出し
そうです。頑張っていきます。
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『建築雑知識』は建築技術者と建築家のグループ
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が「建築を愛する皆様」へお送りします。
編集発行:E&A建築企画 事務局
E-mail:jim@kentiku-kikaku.com
http://www.kentiku-kikaku.com/
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