◆
◆◇◆ ☆建築雑知識 045号
◆◆◆◆◆
◆■ ■ ■◆
■ ■ ■
■■■■■ Engineer & Architect group 建築企画
*******************************************************************************
先週雷の記事をお送りしましたところ、関東を中心にすごい雷が発生しました。
別に記事が雷を誘発させた訳ではないでしょうが、タイミングがぴったし合って
しまいました。
今週は地震をお送りしますが、この記事が誘発しないことを祈ります。
******************************************************************************
第45号の記事
1.記事・・・地震・雷・火事・(おやじ)・・・その3
・心配な1981年以前の建物
・放って置かれた旧基準の建物
・進まぬ震災後の補強工事
・耐震補強で景気回復を!
2.用語の説明
3.編集あとがき
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
地震・雷・火事・(おやじ)・・・その3
∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞
「何が怖い」で始まった地震、雷、火事、親爺シリーズもいよいよ地震に成りま
した。
何が怖いってやはり地震でしょう。神戸淡路大震災を体験した私としては、やは
り地震の怖さは身に染みています。
私自身は地震で被害にあったわけでもありませんが、地震の直後の被災地を目の
当たりにして言葉を失いました。ゴーストタウン化した阪神の町を歩くにつれ、
自然の脅威の前には我々の力は本当に微力なものだと思い知らされたものです。
被災地を回って驚いたことは、頑丈なぶっといコンクリートの柱が中間で折れて
1mもずれて押しつぶされていると言うのに、隣ではガラスのカーテンウォール
の建物がガラス1枚割れることも無く平然と建っていたことでした。
いかにも頑丈そうな古い建物は無惨な姿をさらし、頼りなさそうな新しい建物が
平然と建っていたのは何故でしょう?
これは鉄筋コンクリート造とか、木造、鉄骨造とか構造体の優劣で被害の大小が
出たのではありません。古い建物と新しい建物との差でした。
すなわち、被害の差は構造計算をする時の基準の差によって起きたものだったの
です。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆ 心配な1981年(昭和56年)以前の建物
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
なぜ昭和56年以前の建物が心配かと言いますと、56年を境に建物の構造耐力
を決める計算基準が大幅に変わったからです。
56年以降の基準をそれまでの基準と区別するために「新耐震構造基準」と呼ば
れていますが、この「新耐震基準」とそれまでの旧基準とは比べものにならない
程大きく違います。
新耐震基準に変わったのは、従来よりも地震の揺れが変わったのでなく、学問的
に地震のメカニズムと地震が建物に及ぼす影響が解ってきたからです。
それまでは単純に地震の時は横から建物の自重の20%の力が横から押されると
仮定して構造解析をしていました。
しかし、多くの地震を経験していく内に、建物は揺れると丈夫な部分を中心に建
物全体が捻れてしまい、中心から離れた部分ほど大きな力が掛かることが判明し
ました。新耐震基準はこの捻れの概念を取り入れたのが特徴です。
この新耐震基準は、阪神大震災でも大いに力を発揮し、その有効性が証明されま
した。
震災後プレハブ住宅は丈夫と言う評判が建ち、その後の復興ではプレハブ住宅が
大きく伸びました。
現実に新しい工法のプレハブ住宅は目立った被害を受けて無く、しかも復興には
手っ取り早い工法ですから、ハウスメーカーの営業マンに取っては格好の殺し文
句だったと思います。
「我が社のプレハブ住宅は被害を全く受けておりません。」
「住宅を建てるには、これからはプレハブです。」
しかし、それはプレハブ住宅だから丈夫と言うよりも、新しい基準で建てられた
建物は丈夫と言い換えなくてなりません。
従来工法の木造住宅も震災には立派に耐えたのです。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆ 放って置かれた旧基準の建物
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
では、旧基準は不備があると解っても、何故そのままで使用することを許したの
でしょう。
建築基準法では、新しい法律は既に建っている建物には遡及(そきゅう)しない
のを原則としています。
法律が変わるたびに建物を改築するのは、国民に対して多大の負担を掛けてしま
うと言うのが理由なんですね。
新しい法律が出来たので、今住んでいる住宅を新しい法律に合うように改修工事
を遣れって言うのは勿論問題です。
しかし、改修工事や補強工事をするしないは国民各自の判断に任せるとし、事柄
が国民の安全性に関することですから、もっと「旧基準の建物は充分ではありま
せんよ。」って広報をすべきだったと思います。
そう言う認識があれば、震災に遭われて命を無くされた多くの方の中にも、補強
工事を実施し災難を免れることも出来たのでは無いでしょうか。
悪い情報を流すと国民が動揺するとか負担が多いなど気を廻すよりも、もっと情
報を開示し、判断は国民各自に任せることが重要と考えますが、皆さんどう思い
ます?
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆ 進まぬ震災後の補強工事
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
一旦震災に遭うと多くの人的な犠牲が出るだけでなく、街の復興には大きな時間
と財政を必要とします。
阪神大震災での被害総額は10兆円と言われ、その普及には被害額を上回る12
兆円が投入されたと言われています。
このことに懲りて、復興に多くの財政を使うより、打撃を最小限に止める施策が
重要と、「建築物の耐震改修の促進に関する法律」ができました。
この法律は、旧基準で建てられた建物で、3階建以上、1000m2を越え、不特
定多数の人々が利用する建物の建築主は、耐震診断を行い耐震補強に努めなけれ
ばならない。と定めたものです。
この法律が出来た当時は震災直後と言うこともあり、各自治体も法律に基づいて
耐震診断の補助制度を設けたり、自治体所有の学校などの補強工事を進めていま
した。
しかし、長引く不況で財政も逼迫してくると補強工事もなかなか進まず、重点的
に進めていた学校の補強工事も未だ30%に止まっている様です。
「喉元過ぎれば・・・」、「無い袖は振れぬ」と言うことでしょうか。
確かに地方財政は困窮しており、自治体で出来ることは限られています。やはり
国が動かないと解決しない問題です。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
◆ 耐震補強で景気回復を!
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
デフレ・スパイラルに突入した現在、景気対策はもう先送りは出来ません。
不良債権問題だけが注目されていた頃、構造改革が必要と公共工事が随分やり玉
に挙げられました。
何らか形で建設業に代わる産業の従事者は、全産業の2割にも達します。景気後
退で財政的に持たなくなった国は、公共工事を中心に回っている日本の構造を改
革しなければならないと構造改革を叫びました。
「これからはITの時代」、
「新しい産業を育成しなければならない」、
「新しい産業に従事者をシフトしなければならない」
など声高に叫んでいた学者も、経済評論家も、ITバブルが崩壊すると「IT」
の「ア」の声もしません。
それならばと、今度は「日本はバイオに乗り遅れた!」「これからはバイオだ!」
と騒ぐ有様。
確かに長期的に見れば、これからの時代は「IT」であり、「バイオ」の時代と
思います。
しかし、産業は急旋回は出来ません。バイオ産業もまだまだ育って無く、従事者
をシフトするどころか、バイオを修学した学生や大学院生さえ就職がままならな
いのが現状です。
デフレ対策には、経済刺激策は絶対必要です。それには全産業の従事者の2割を
占める建設界を刺激するのが最も効果的な施策です。
かって世界大不況の折り、アメリカはニューディール政策で各地でダムを建設し
景気を刺激しました。
しかし、無駄なダム建設や、予算消化のための道路掘削には大反対です。
それこそ一部のゼネコンや癒着企業をのさばらせるだけで、景気刺激には何にも
なりません。
景気刺激は多くの人手を必要とする事業こそが有効です。
東海地震、南海地震、そして東南海地震の発生が、近い将来に確実に発生すると
解った現在、景気対策と絡めて国の力で補強工事を実施するのが、先の教訓を生
かす施策と考えます。
建築技術者と建築家のグループ「E&A」は声高に主張します。
「国民に安心と安全を!」
「耐震補強でデフレ克服を!」
******************************************************************************
★用語の説明コーナー★
**********************
カーテンウォール・・・ガラス張りの建物で採用されている建具の取付け工法。
建物躯体とは取付け金物で固定され、地震などで建物が
変形しても、建物と建具がずれて変形が建具に伝わらな
いようにしてある。
丁度上から吊したカーテンがゆらゆらして、直接力を受
けない様なイメージから名が付けられた。
でも、カーテンの様に丈夫だけで止めてあるわけでは無
く、各階で止めてある。
******************************************************************************
★編集あとがき★
*****************
今日はテンションが上がってしまいました。テレビの報道番組や、経済番組を見
ていて、経済評論家や学者が自分の見通しの悪さを棚に上げて、何のてらいも無
く解説しているのに無性に腹が立ちました。
次回は、冷静に地震の続きをお送りします。
*******************************************************************************
『建築雑知識』は建築技術者と建築家のグループ
「Engineer&Architect group建築企画」
が「建築を愛する皆様」へお送りします。
編集発行:E&A建築企画 事務局
E-mail:jim@kentiku-kikaku.com
http://www.kentiku-kikaku.com/
|